こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
近年、フロリダを中心に開発業者によるコンドミニアムの買収が増えています。
開発業者の買取動機はいくつかあり、そもそものきっかけは数年前に遡ります。
特に2021年6月にフロリダ州サーフサイドで発生したChamplain Towers Southの崩壊事故の影響は大きく、古い建物の安全性が問題視されるようになりました。
この事故では98人が犠牲となり、建物の構造的な欠陥が浮き彫りにされたのです。
この時の崩壊の原因としては
⇒ 地下駐車場のコンクリート劣化
⇒ 水害による腐食
⇒ プールデッキの補強不足
が挙げられ、これらが長年放置されていたことが問題となりました。
実際のところ、この手の築年数に伴う不具合の問題はフロリダに留まらず、全米でも発生しており、同様の懸念が広がる可能性があります。
そして実際、フロリダのコンドミニアム市場は厳しい状況にあります。
Champlain Towers Southは1981年に建設されましたが、崩壊後の調査で建築基準を満たしていない点が多数発見されました。
これを受けてフロリダ州では築30年以上のコンドミニアムに対し、構造の健全性を確認する検査を義務化した経緯があります。
さらに修繕費の積立金を確保するよう、住宅所有者やコンドミニアム管理組合に求める法律も施行されました。
この法律の目的は長期的に安全性を向上させることですが、一方で住民にとっては大きな負担となります。
結果として法改正により管理費や修繕費が増大し、コンドミニアムの維持コストが上昇するため、経済的に厳しい状況に追い込まれるオーナーすら出てきている状況です。
このような背景から、特に高級不動産デベロッパーによるコンドミニアムの買収が加速していることになります。
とりわけ、以下のような特徴を持つ物件は買収対象になりやすいようです。
- 近隣で他の物件が既に買収・再開発されている
- 大規模な駐車場スペースがある(建物の増築が容易)
- 100戸未満の小規模コンドミニアム(交渉相手が少なく済む)
- 海沿いに位置している(資産価値が高い)
- 1995年以前に建設された(修繕費が高騰しやすい)
買収のプロセスでは、デベロッパーが市場価格より高い額を提示して住民を説得している動きがあります。
なぜ高額なオファーを出すのでしょうか?
理由は単純で、物件をまとめて買い取り、大規模な再開発プロジェクトにするためです。
現在の建物を取り壊し、新たな高級コンドミニアムや商業施設を建設することでデベロッパーは大きな利益を得ることができます。
特にフロリダのような観光地では海沿いの一等地を新築の超高級マンションに変えることで、投資家や富裕層に売りやすいのです。
実際、マイアミのSolaris at Brickell Bay地区では、謎のLLC(合同会社)が2年以上かけて住戸を買い集め、現在は138戸半数以上を所有していることが確認されています。
ただしフロリダ州の法律では全体の80%の同意がなければコンドミニアム管理組合を解散できないため、交渉は続いる様子。
このような時、オーナーが買収に直面した場合はどのように対応すべきでしょうか。
まず前提として、最初の提示額ですぐに売却を決める必要はありません。
特に他の住民と連携して交渉すれば、より良い条件を引き出せる可能性もあるはずです。
またこんな時こそ、専門家である不動産弁護士に相談することです。
買収オファーの詳細や契約内容をしっかり確認し、自分の権利を守るための適切な対応を取ることが重要となります。
コンドミニアムの買収は、特に経済的に困難な状況にあるオーナーにとっては救いとなるケースもあり得ると思いますが、いずれにせよ慎重な判断が必要です。
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かくして、フロリダを中心に進むコンドミニアム買収の波は、全米に広がる可能性があります。
もしも米国内に所有する自分の物件が同様の買収ターゲットになる場合、適切な知識を身につけ、最善の選択肢を考えておきましょう。
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