こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
先日、テキサス州ダラス市が打ち出した、小規模多世帯住宅開発を後押しする画期的な施策について触れておきたいと思います。
以下が今回の5つの改革ポイントです。
「1~8ユニット向け新建築基準コード」
従来の「商業用」扱いから切り離し、最大8戸程度の小規模集合住宅を専用の建築基準で建てられるようにしたものです。
「最大8ユニットまでを対象とした簡易住宅用ルール」
3戸以上の小規模建築でも、高層ビル並みの厳しい商業コードを適用せず、戸建住宅と同じ簡易ルールで設計・施工できるようにした仕組みです。
「商業グレード要件(スプリンクラー、二重階段など)の撤廃」
高層ビル向けに定められた消火設備や避難通路の強化といったコスト高の規定を、1~8ユニット建築では不要とし、建築コストを大幅に軽減しています。
「『ミッシングミドル』多世帯開発の解禁」
一戸建てと大規模アパートの中間に位置する、小規模多世帯(ミッシングミドル)住宅の開発を法的に認めることで、これまで手が届かなかった層への供給を可能にします。
「数千戸規模の手頃なユニットを迅速に増やす潜在力」
上記の規制緩和によって、低コストかつ工期の短い小規模プロジェクトが飛躍的に増加し、住宅不足を効率的に補える可能性があります。
これらを踏まえ、投資家目線で注目すべきポイントは次の3点です。
1.土地取得コストに対して建築可能ユニット数が飛躍的に増えること
例えば、従来の商業コードでは2戸しか建てられなかった50フィート×100フィート(約155㎡)の区画に、新ルールを適用すると6戸のトリプレックス(3世帯×2棟)を建築可能になります。
• 土地取得費:$200,000(仮定)
• 従来の2戸プラン:1戸あたり土地コスト $100,000
• 新8ユニットプラン(今回は6ユニット例):1戸あたり土地コスト $33,333
同じ投資額でユニット数を3倍に増やせることで、一区画あたりの潜在賃料収入が大幅に上昇します。
2.建築リスクの低減による融資条件の緩和可能性
スプリンクラーや二重階段の設置など商業コード特有の要件を省くことで、建築スケジュールとコストが予測しやすくなります。
• 旧ルール:工期12ヶ月、コスト超過リスク20%、銀行融資LTV(融資比率)60%程度
• 新ルール:工期8ヶ月、コスト超過リスク10%、銀行融資LTV70%程度見込み
融資比率が上がることで自己資金の負担が軽減され、資金調達がスムーズになります。
3.安定した中所得層向けキャッシュフローの見込み
ダラスの中所得層(年収50,000~60,000ドル)は、月額1,200~1,400ドルの賃料支払い能力があります。
• 旧2戸プラン:月額賃料合計2,600ドル($1,300×2)
• 新6ユニットプラン:月額賃料合計7,200ドル($1,200×6)
空室リスクを仮に1戸(約17%)と想定しても、月額6,000ドルの手取り収入。長期的に見れば、安定的かつ高いキャッシュフローが期待できます。
このように考えると、ダラスのコード改正は
- 土地コスト効率
- 融資環境
- 賃料収入
の3つの側面で投資家に大きなメリットをもたらしそうです。
この「ミッシングミドル」機会を捉えることで、従来の大規模開発とは一線を画す新たな収益モデルを築くことが可能となるのではないでしょうか。
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