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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
7月の全米既存住宅販売が「予想外の増加」となりました。
販売件数は季節調整済み年率で401万戸、前月比で2.0%の上昇です。
前年比でも0.8%の小幅増でプラス域を維持しました。
金利の鈍化と在庫の増加が、凍りついていた需給に少しだけ風穴を開けています。
30年固定の平均金利は6.58%まで下がり、昨秋以来の水準に落ち着いている状況。
とはいえ、パンデミック直後の超低金利と比べると依然として「高止まり」の範囲です。
それでも「Affordability(購入負担力)」はわずかに改善し、実需がじわりと戻っていることが分かります。
かつ今回の数字には、現場の肌感覚と一致するサインがいくつも含まれています。
第一に、価格の伸びが落ち着いてきたことです。
全米の中央値は42万2,400ドルと、前年同月比でわずか0.2%の上昇にとどまりました。
25か月連続の前年同月比プラスは維持しつつも、伸び率は2023年6月以来で最小です。
価格は6月の過去最高からは一段落し、買い手側にとって交渉余地が生まれています。
次に在庫の厚みです。
売り出し在庫は155万戸に増え、月間販売ペースベースの在庫月数は4.6か月。
6月の4.7か月からはわずかに低下したものの、コロナ禍直後の極端な逼迫からは明確に離れました。
「選べる市場」に近づきつつあるのは確かです。
そして三つ目にはプレイヤー構成の変化が鮮明となり、現金買いは全体の31%と、歴史的に見ても高い比率になりました。
投資家のシェアも20%まで上がり、昨年の13%から大幅に拡大です。
けれどもその一方で初めての住宅購入者の比率は28%へ低下し、前月30%から後退しました。
これは「金利が下がっても、頭金や返済負担の壁は依然高い」という現実を映しているように思います。
そこで今度は地域別に見ると、北東部・南部・西部で販売が増え、中西部のみ減少しています。
西部の持ち直しは、カリフォルニアの一部エリアで実需と投資の両輪が動き出したサインです。
足元の住宅ローン申請データを見ても、レートが6%台半ばに落ちるたびに申請が反応する「弾性」が戻っています。
そもそも、市場の転換点は常に「金利×在庫×期待」の3点で訪れます。
今回はその3点のうち2つまでが好転し始めました。
金利は低下トレンドへ、在庫は厚みを増し、そして期待は「Fed will cut soon(連邦準備理事会はまもなく金利を下げるだろう)」という見方で支えられています。
とはいえ、401万戸という販売ペースは過去2年の平均と同程度で、歴史的には低位です。
2007~2009年の金融危機時を下回る月も続いたことを考えると、回復のスローレーンにいるのは確かです。
Price stickiness(価格の粘着性)が残る限り、需要の戻りは段階的になります。
ただしそれでも、買い手と売り手の心理は確実に変わり始めている様子も伺えます。
買い手は「選べる・交渉できる」自覚を持ち、売り手は「ピークから半歩引く」という交渉の流れが主流になり始めました。
この空気の変化は、数字に先行して現場に表れます。
現金比率の高さは、キャッシュ・バイヤーにとっての「Negotiation Power(交渉力)」を示すものです。
金利高でもディスカウントを引き出せるのは、資金調達の制約がないからです。
投資家シェアの上昇は、「Rent vs. Buy(借りるか買うか)」の損益分岐が一部市場で投資妙味へ傾き始めたことを意味します。
そして賃料の粘着性と家賃上昇の持続が、キャッシュフローの見通しを下支えしています。
では、実務として今、何をすべきか。
今の時期に不動産購入希望者に考えられる手法は3つです。
一つ目はPre-approvalの更新とRate Lock戦略の再設計です。
6.58%近辺でロックできるなら、ポイント買いの費用対効果を比較し、ブレークイーブン期間を数値で確認しましょう。
2つ目、在庫が増えているエリアに絞って「Price cuts tracker」を導入し、値下げ初動から7~10日の交渉ウィンドウを逃さないことです。
そして3つ目、Inspection(物件調査)強化とSeller credit(売り手によるクロージングコストの一部負担)の最大化です。
修繕項目を定量化し、金額の根拠を添えて交渉することで、総支出を数%下げられます。
また売主への提案も3つ挙げられます。
一つ目、初期価格の「Just-right pricing」を徹底し、最初の2週間での反応をKPI化することです。
2つ目、Rate buydownやクロージングコスト補助を前提にした「Net proceedシナリオ」で戦略を可視化してください。
そして3つ目、現金買い手と投資家を意識した「短期クロージング」「As-is+限定クレジット」などの条件設計です。
投資家にとっては、今が「Underwriting discipline(審査の規律)」を保ちつつ仕込みを進める局面です。
キャップレートは地域差が大きく、金利低下で再度圧縮が進む可能性もあります。
その一方、賃貸需要は雇用と世帯形成の回復に連動して底堅く、リスクは主として取得価格と金利の取り扱いに集中します。
いわゆる
「yield on cost(コストに対する利回り)>exit cap(出口のキャップレート)」
の設計を崩さず、金利感応度の高い期間構造を避けるのが肝要なのです。
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