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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
アメリカで「デベロッパーとして開発に携わる」と聞くと、多くの人が華やかな摩天楼や巨大なレジデンシャル・プロジェクトを想像するかもしれません。
けれどもその実態は、泥臭い交渉と、緻密な計算、そして何よりも「見えないリスク」をいかに言語化し、コントロールするかの連続です。
今日は、私が現地で肌で感じてきた「アメリカでのデベロップメント(開発)の本質」について、教科書には載っていない視点で解説したいと思います。
1. 「土地」を買うのではない、「権利」を買うのだという感覚
まず、日本とアメリカの決定的な違いについて触れておかなければなりません。
アメリカで開発を行う際、私たちが最初に向き合うのは土壌でも立地でもなく、その土地に付随する「Zoning(ゾーニング:用途地域指定)」という目に見えない壁です。
多くの投資家が「この場所ならアパートが建てられそうだ」という直感で動こうとしますが、それは非常に危険なギャンブルです。
極端な話、隣のブロックでは5階建てが許容されているのに、自分の土地では2階建てまでしか許可されない、なんてことがザラにあります。
「なぜ隣は良くて、うちはダメなんだ?」
そう叫びたくなる気持ちもわかりますが、行政が定めた「権利の枠組み」を理解せずに一歩を踏み出すことは、地図を持たずに砂漠へ入るようなものです。
デベロッパーの仕事の本質は、土地という「物質」を買うことではなく、その土地で何ができるかという「権利(Entitlement)」を確定させることにあります。
2. コミュニティという「最大のステークホルダー」
そして開発を語る上で避けて通れないのが、近隣住民やコミュニティ・ボード(地域委員会)との対話です。
アメリカ、特にカリフォルニアやニューヨークといった主要都市では、「NIMBY(Not In My Back Yard:うちの裏庭にはお断り)」という精神が非常に強く根付いています。
どんなに素晴らしいデザインのビルを建てようとしても、地域住民が「日照権が損なわれる」「交通量が増えて子供が危ない」と反対すれば、プロジェクトは数年単位でストップします。
ここで求められるのは、建築の知識ではなく、泥臭い「人間力」と「調整力」です。
私自身、過去のプロジェクトで住民説明会に参加した際、厳しい怒号を浴びせられた経験があります。
「お前の持ち込むこのプロジェクトは、俺たちの街の歴史を壊す気か?」
その時、私はテクニカルな説明を一切やめました。
代わりにこの開発が10年後のこの街の資産価値をどう高め、次世代の子供たちにどんな教育環境を提供できるかを住民としての視点で語りかけました。
ロジックだけでは人は動きません。デベロッパーには、街の未来を描く「ストーリーテラー」としての資質が求められるのです。
3. 数字の裏側にある「感性」と「バッファー」
開発には莫大なお金が動きます。
例えば、中規模のアパート建設でも、$5,000,000(約7.5億円)から$10,000,000(約15億円)といった資金が、まるで水のように流れていきます。
ここで初心者が陥る罠が、エクセルシート上の完璧な収益シミュレーションを信じ切ってしまうことです。
アメリカでの建設現場では、予期せぬトラブルが「必ず」起こります。
「地中から予想外の廃棄物が出てきた」
「供給網の混乱で資材価格が20%跳ね上がった」
「労働組合との交渉が決裂した」。
こうした事態に直面したとき、あなたを救うのは「$1」単位の細かい計算ではなく、あらかじめ積んでおいた「Contingency(予備費)」という名の心の余裕です。
私は常に、総予算の20%〜30%は「消えてなくなるお金」として最初から計算に入れます。
「そんなにバッファーを持たせたら利回りが下がるじゃないか?」
そう思うかもしれません。
けれども生き残るデベロッパーは、利回りの高さはもちろんのこと、それ以上に
「プロジェクトを完遂させる確率」
を優先します。
4. プロフェッショナルを使いこなす「指揮者」の視点
アメリカでの開発は、総合格闘技のようなものです。
建築家、構造エンジニア、弁護士、環境コンサルタント、ゼネコン(GC)、そして銀行。
これら一流の専門家たちを束ねるのが、デベロッパーの役割です。
よくある失敗は、デベロッパー自身が「何でも屋」になろうとして、各分野の専門性に口を出しすぎることです。
けれどもここでの仕事は、バイオリンを弾くことではなく、オーケストラ全体が最高のハーモニーを奏でるように導く「指揮者(コンダクター)」であるべきです。
「このプロジェクトの魂はどこにあるのか?」
「私たちが妥協してはいけない一線はどこか?」
その指針(ビジョン)を明確に提示し続けること。それこそが、言葉に魂を込めるプロの仕事だと言えます。
まとめ:アメリカ開発における「三種の神器」
- Entitlement(権利確定)の徹底: 土地そのものよりも、そこにある法的な可能性を精査すること。
- Community Engagement(地域との共生): 反対勢力を敵と見なさず、街の未来を創るパートナーとして対話すること。
- Contingency(余裕)の確保: 資金面でも時間面でも、必ず「遊び」を設けて不測の事態に備えること。
結局のところ、不動産開発とは「不確実な未来に、確かな形を与える行為」です。
そこには単なる金儲けを超えた、クリエイティブな喜びと、社会に対する責任が同居しています。
その重みを知る者だけが、アメリカという広大なマーケットで真の成果を手にできるのだと私は確信しています。
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