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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
近年、アメリカの住宅市場で新しいタイプの家主が増えています。
その名も「Accidental Landlords(不本意な家主)」。
これは投資目的で賃貸物件を購入した人ではなく、本来は「売るはずだった家」を手放せず、やむなく不本意に物件を貸し出している人たちのことを指します。
その背景には、住宅ローン金利の上昇と市場の停滞があります。
家を売ろうとしたものの買い手が見つからず、結局賃貸に切り替えるパターンですが、家賃収入だけでは住宅ローンをカバーできずにローンのリファイナンシングを行い、持ち出しを減らす工夫をしています。
このようなケースが今、全米で急増しているのです。
Realtor.comの最新レポートによると、2025年5月時点で全米の「売却取り下げ件数(Delisting)」は前年より47%増。
つまり売りに出しても希望価格で売れず、マーケットから撤退する人が続出しているということです。
売り手の多くは数年前の高値を基準に価格設定しており、今の買い手の慎重な姿勢とのギャップが生まれています。
これが「売れない→貸す→市場に賃貸が増える」という流れを生み出しているわけです。
他の分析によれば、アトランタ、フェニックス、ヒューストン、タンパ、シャーロット、そしてダラスなどの都市では、販売在庫が前年比20%以上も増加。
その多くは「元・自宅」だった物件です。
ここでも、これまで住宅を購入して住んでいた人が、今はその家を貸し出しているわけです。
「Accidental Landlord」とはまさにこの現象を指しています。
そして貸し出したとしても必ずしも利益が出るわけではありません。
「月々の家賃ではローンが賄えない」
という例も多く、実際には数年間は赤字で耐えるケースもあります。
それでも「売って損を出すよりはまし」と考える人が多く、結果として市場に出回る中古住宅が減少しているのです。
Realtor.comのエコノミストは
「過去の景気後退期では、住宅価格の下落に耐えられず売却する人が多かったが、今の家主たちは高いエクイティ(自己資本)を持っているため、売らずに待つ余裕がある」
と指摘。
そしてこの「余裕」こそが、アメリカの住宅市場を硬直化させている要因の一つです。
賃貸市場への影響は
一方で、賃貸市場にとってはどうでしょうか。
一見、賃貸物件が増えることは借り手にとって朗報に思えます。
けれども賃貸の専門家たちは「家賃が劇的に下がることはない」と口を揃えます。
「これまでのように毎年4〜5%の値上げは難しくなるが、せいぜい1〜2%の緩やかな上昇に落ち着くだろう」
との指摘が一般的で、「値上げペースは鈍化するが、下がるわけではない」というのが現実です。
実際、2025年の全米主要20都市における一戸建て賃貸の平均家賃上昇率はわずか0.8%。
これは2011年以来の低水準であり、リーマン・ショック後のような景気後退期に近い動きです。
とはいえ若い世代の多くはいまだに住宅購入が難しく、賃貸市場の需要は依然として高いまま。
そのため「貸したくても借り手がいない」という状況にはなりにくいのが現状です。
実際、ダラスやタンパでは2025年8月時点で販売物件がそれぞれ25%、39%も増加し、それに伴って賃貸物件の掲載数も大幅に増えています。
「売却市場が鈍化すると、在庫の一部が賃貸市場に流れ込む」
というわけです。
。。。
かくして、「売りたい人が貸し主になり、買いたい人が借り手になる」という循環が、今のアメリカ不動産市場の新たな構造を作り出しています。
この動きは、投資家にとっても重要なシグナルです。
本来、機関投資家が支配していたシングルファミリー・レンタル市場に、個人の「不本意な貸主」が次々と参入している。
結果、供給が増え、競争が激化し、家賃の急上昇が抑えられている。
要するに短期的には賃貸市場の安定化が進む一方、長期的には住宅の「売り渋り」が住宅価格を高止まりさせるリスクを孕んでいるということになります。
結果として「Accidental Landlords」の増加は住宅購入者にとってはチャンスを遠ざけ、借り手にとっては緩やかな恩恵をもたらす現象です。
けれども、この現象の根底にあるのは「金利の高さ」と「価格への期待のすれ違い」。
それが続く限り、売りも買いも慎重なまま賃貸だけが静かに膨らみ続けるのではないでしょうか。
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