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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
ここ最近、アメリカの不動産業界で再び大きな話題を呼んでいるのが、Zillow(ジロー)を巡る新たな集団訴訟です。
訴えの中心は「違法なキックバック(報酬の不当授受)」。
Zillowの人気プログラム「Premier Agent」と、その住宅ローン部門「Zillow Home Loans(ZHL)」の関係に焦点が当てられています。
訴訟によると、Premier Agentとしてリードを得たい不動産エージェントは、Zillow Home Loansの事前承認件数(pre-approval quota)を一定数満たすことが求められていたといいます。
つまり「Zillowのローンを利用する顧客を紹介すれば、より多くの見込み客リードを優先的にもらえる」という仕組みです。
この構図は、アメリカの不動産取引で禁止されている「RESPA法(Real Estate Settlement Procedures Act)」の違反にあたる可能性があると、原告側は主張しています。
この法律は、住宅購入者に対して中立で誠実なアドバイスを提供することを不動産エージェントに義務付けるものです。
ところが今回のケースでは顧客の利益ではなく、「Zillowのリード獲得条件」が優先され、顧客が不当にZillowのローン商品に誘導されたというのです。
訴状には、アラスカ州アンカレッジ在住の物件を初めて購入したAraba Armstrong氏の体験が記されています。
彼女は2024年にZillow経由でPremier Agentに紹介され、そのエージェントの勧めでZillow Home Loansのローンに申し込み、最終的にそのまま契約を結びました。
訴えによると、彼女は「Zillowで見つけた家なら、ローンもZillowで組まなければならない」と誤解していたといいます。
Zillow側のシステムにも、こうした誤解を助長する仕掛けがあるとされています。
例えばユーザーが住宅情報ページを閲覧すると、「Zillow Home Loansに興味があります」というチェックボックスがあらかじめオンになっていることが挙げられています。
この仕様は一見ささいに思えるかもしれません。
けれども購入者がそのまま進めてしまえば、知らぬ間にZillowのローン担当者から連絡が入り、自然とそのルートに誘導される構造になっているのです。
さらにPremier Agent側には「Zillowのローン事前承認数が一定に達しないと、見込み客リストのアクセスが制限される」というルールがあったとされています。
つまり、エージェントはZillow Home Loansに顧客を紹介しなければ自分のビジネスが維持できなくなる。
この「構造的圧力」が、今回の訴訟の本質です。
訴訟を担当した弁護士たちは、Zillowがこうした仕組みを通じて「不動産エコシステム全体を自社アプリに取り込み、ローンから取引完了まで一括で囲い込もうとしている」と指摘しています。
実際のところ、Zillowはここ数年、「Super App(不動産のスーパーアプリ)」構想を掲げています。
家探しからローン審査、エージェント紹介、クロージングまでをすべてZillowのアプリ内で完結させる、というものです。
一見すると便利な構想に聞こえますが、その裏側には競争を抑制し、顧客の選択肢を奪うリスクも潜んでいるというのが原告側の指摘。
そしてこの点は、すでに複数のライバル企業も同様に異を唱えています。
たとえば、不動産ポータル最大手の一角であるCoStar Groupは、Zillowを相手取り、著作権侵害や競争制限行為をめぐって訴訟を起こしています。
CompassやRedfinもそれぞれZillowの契約条件や提携形態を問題視しており、業界全体が一種の「Zillow包囲網」のような状態になっており、Zillowにしてみればまさに四面楚歌。
興味深いのは、Zillowに対する訴訟が今回だけではないということです。
わずか2か月前の9月にも、Zillow Flexという別の紹介プログラムをめぐって集団訴訟が提起されています。
その内容は、「Zillowがリード経由で取引を成立させたエージェントから最大40%の手数料を徴収しており、そのコストが結果的に購入者に転嫁されている」というものです。
つまり、Zillowが不動産取引の「プラットフォーム」であると同時に、実質的に取引の中心的なコントローラーになりつつあるのです。
それに対して
「不動産エージェントの独立性が損なわれる」
「顧客にとっての選択の自由が失われる」
との批判が高まっているわけです。
けれどもZillowの立場からすれば、こうした統合戦略は競争激化するオンライン住宅市場で生き残るための必然でもあります。
- AIによる物件レコメンド
- ユーザーの検索履歴データ分析
- オンラインでの即時ローン審査
など、Zillowは不動産テック企業としての次のステージに進みつつあります。
その一方で、「便利さ」と「公正さ」のバランスをどう取るかという根本的な課題が浮き彫りになっているわけです。
いつの時代でも、消費者が求めるのは透明で公平な取引です。
不動産業界がデジタル化しても、その原点を見失うわけにはいきません。
。。。
かくして、今回のZillow訴訟は単なる一企業の問題にとどまらず、アメリカ不動産業界全体の方向性を問う試金石となっています。
エージェントとテック企業、そして消費者。
三者の関係がどのように再構築されていくのか、今後の展開に注目です。
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