投資案件をメールマガジンで無料購読。
下記よりメールアドレスをご登録ください。
こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
いまFHFA(Federal Housing Finance Agency)が、30年固定ローンの代わりとなる3つの新しい仕組みを検討しています。
ポータブルモーゲージ、50年ローン、そして暗号資産担保ローンです。
30年固定は戦後アメリカを支えてきた住宅ローンの王道であり、現在の住宅ローンの90%以上を占めています。
けれども近年の急激な金利上昇によって、この30年固定こそが市場凍結の大きな原因になっているのも事実です。
パンデミック前後に2〜3%の驚異的な低金利を手にした層は、そのローンを宝物のように手放したくありません。
その一方、多くの買い手は6〜7%台という重い金利を受け入れなければならず、市場は「売りたい人も買いたい人も動けない」という異常な状態に陥っています。
そこでFHFAは、新しい仕組みによって市場を動かすことを狙っています。
しかし本当に効くのか。
誰が得をし、誰が損をするのか。
そして市場全体の affordability(買いやすさ)は改善するのか。
順番に整理していきましょう。
ポータブルモーゲージ
まずは、多くの話題を集めている「ポータブルモーゲージ」です。
これは、今持っている低金利の住宅ローンをそのまま次の家に持っていけるという仕組みです。
2〜3%台のローンを持つオーナーにとっては、夢のような制度です。
この制度が実現すれば、「低金利のローンを失いたくないから引っ越せない」という状態が一気に改善します。
市場に在庫が流れ出し、売買件数も動き出す可能性があります。
けれども、ここに大きな問題があります。
その低金利ローンを持っている人だけが圧倒的に有利になることです。
いわばローン版のハイパー格差のような状態になります。
2〜3%の金利を引き継いだ買い手は、6〜7%のローンしか組めない買い手に対して圧倒的な購買力を持つことになります。
つまり、入札競争で勝ち続けるのは金利の黄金チケットを持つ人たちです。
その結果、在庫は増えても価格はむしろ上がる可能性があります。
さらに、ポータブルモーゲージはMBS(Mortgage Backed Securities=住宅ローン担保証券)市場の仕組みを根本から揺るがします。
投資家がリスクを正確に読めなくなるため、そのリターンを補うべく金利がさらに上がるという逆方向の圧力まで出かねません。
活性化はするけれど、平等ではありません。
これは市場を刺激する制度であって、市場価格を押し下げる制度ではないという点が本質です。
50年ローン
次に「50年ローン」です。
これは発想としては分かりやすく、30年を50年に延ばすことで月々の支払いを抑える仕組みです。
計算上、毎月の返済は確かに数百ドルは軽くなります。
たとえば40万ドルの物件に10%の頭金を入れた場合、30年ローンよりも月額は250ドルほど安くなります。
けれどもその裏側には大きな代償があります。
返済期間が長くなるほど、利息は雪だるま式に膨らみます。
試算では、50年ローンは30年ローンよりも生涯支払う利息が約38万ドルも増えるとされています。
これは家1軒分に近い差です。
さらに元本の返済ペースが極端に遅くなるため、10年経ってもほとんどエクイティが増えません。
つまり、長期的な資産形成という観点ではかなり非効率です。
一方で、50年ローンが市場全体を押し上げるほどのパワーはありません。
月々の支払いは確かに下がるものの、そこまで劇的ではないからです。
結局のところ、これも初期負担を軽くする仕組みであって、住宅価格を下げる仕組みではないのです。
ただし、不動産投資家にとっては圧倒的に有利になることは間違いないと思います。
暗号資産担保ローン
3つ目は「暗号資産担保ローン」です。
これは、保有する暗号通貨を担保として住宅ローンを組むというモデルです。
すでに富裕層が株式を担保にローンを組む手法は一般的で、それを暗号資産に置き換えた構図です。
確かに、暗号資産で大きな利益を得ている層にとっては魅力があります。
資産を売らずに流動性を確保でき、税金も最小限で済みます。
けれども、暗号資産を大量に持つ層は米国の全成人人口のわずか14%程度です。
つまり、使える人が極めて限られています。
さらに最大のリスクはボラティリティです。
暗号価格は数時間で大きく値動きすることがあります。
これでは担保価値が急落し、マージンコールが頻発する危険性があります。
もしこれが住宅ローン市場に広がれば、金融システムに余計な不安定要素を持ち込むことになります。
便利ではあるものの、市場全体の負担を軽くする仕組みではありません。
。。。
ここまで3つを見てきましたが、共通している事実が1つあります。
どの制度も「需要を増やす仕組み」であり、「供給を増やす仕組みではない」ということです。
いまアメリカの住宅が高い理由はただひとつ「家が足りない」ことです。
供給不足の状況で需要だけを刺激すればどうなるか。
答えは簡単で、価格はさらに上がります。
ポータブルモーゲージで買い手が増える。
50年ローンで毎月の支払いが楽になる。
暗号資産担保で富裕層が買いやすくなる。
これらは家を買える人の数を増やすだけで、家そのものの数は一切増えません。
結果として市場価格を下げるどころか、むしろ押し上げる圧力を生むものです。
では、結局どのローンが最も役に立つのでしょうか。
それはどの層にとっての役に立つか、という定義によって変わります。
すでに2〜3%台のローンを持つ既存オーナーにとってはポータブルモーゲージが圧倒的に有利です。
初めて家を買う層にとっては50年ローンが月額を少し軽くします。
暗号資産を大量に持つ富裕層にとっては暗号資産担保ローンが一番便利です。
けれども、どれも「市場全体のaffordability(手に届く価格帯)を改善する」という根本課題は解決しません。
必要なのは、信用供給ではなく住宅供給です。
家そのものが増えなければ、どんなローン商品を導入しても価格は下がらない。
今の市場が抱える本質的な問題はそこにあります。
そして何より、こうした新制度の議論は投資家にも買い手にも大きな影響を与えます。
もし導入されれば、市場が一時的に動き出す可能性はあります。
けれども、その動きは買いやすくなるというより、競争が激しくなるという方向に行きがちです。
そのため、今後の市場を読む上でも需要を刺激する制度と供給を増やす政策はまったく別物だ、という視点で見ていくことが重要です。
新しいローン制度の議論は続いていますが、本当の解決策は住宅供給そのものにこそあります。
投資案件をメールマガジンで無料購読。
下記よりメールアドレスをご登録ください。