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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
本年最初の記事は、現在のアメリカ市場において都市部ではなく、むしろ地方の郡部で住宅価格が急騰しているという少し意外に感じる最新の住宅市場データです。
統計を見ると、この6年間で最も価格が上昇したのは、ニューヨークやロサンゼルスのような大都市ではなく、実は人口1万人前後の中西部や南部の農村部でした。
この事実は、今後のアメリカ不動産投資や居住戦略を考えるうえで極めて重要な示唆を与えています。
全体像を整理してみましょう。
農村部の価値が高まる
2019年11月から2025年11月までの約6年間で、都市圏に属さないノンメトロ郡、いわゆる地方郡の住宅リスティング価格は中央値で70%以上上昇しました。
その一方で、大都市圏の郡における住宅価格の上昇率は30%強にとどまっています。
もともと安かったエリアほど、価格上昇のスピードが圧倒的に速かったということになります。
特に顕著だったのが、中西部と南部です。
インディアナ州のブラックフォード郡は人口1万2,000人未満という小さな郡でありながら、地方郡の中で住宅価格上昇率トップとなりました。
2019年当時、平均的な住宅価格は約5万6,000ドルでした。
それが2025年には、約15万6,000ドルまで上昇しています。
上昇率は実に186%です。
それでもなお、このエリアの住宅価格は全米中央値の約3分の1水準にとどまっています。
「安かったからこそ、大きく上がった」という構造が、ここにははっきりと表れています。
二番目に大きく伸びたのが、テネシー州のローダーデール郡です。
この郡では、住宅価格が約160%上昇しました。
2019年に8万3,000ドル程度だった住宅が、現在では21万5,000ドル前後で取引されています。
テネシー州といえば、州所得税がないことで知られています。
加えてナッシュビルを中心とした雇用環境の強さもあり、州全体への人口流入が続いているのです。
とはいえ、移住者のすべてが都市部を選ぶわけではありません。
より広い敷地、交通渋滞の少なさ、そして価格の手頃さを求め、周辺の農村部を選ぶ人が増えているわけです。
この流れはインディアナ州のラッシュ郡やファウンテン郡、さらにはアイオワ州のミッチェル郡などにも共通しています。
これらの郡はいずれも、6年間で150%前後の価格上昇を記録。
なぜ農村部が上昇するのか
ここで重要なのが、なぜこのような農村部の不動産価値が急激に上昇する現象が起きたのかという点です。
大きな要因の一つが、パンデミック以降に定着したリモートワークです。
ハーバード大学の住宅研究機関による分析では、在宅勤務の普及により都市部に住む必然性が薄れたことが指摘されています。
その結果、これまで人口流出が続いていた地方郡で純移動数がプラスに転じました。
パンデミック前の3年間、地方郡は約7万8,000人の人口純減でした。
ところが2021年から2023年の3年間では、約54万人が地方に移住しています。
この急激な人口流入が住宅需要を一気に押し上げました。
供給が限られている地方市場では、需要増加がそのまま価格上昇につながります。
けれども、この動きは必ずしも歓迎されるものばかりではありません。
地方の賃金水準は、都市部よりも低いまま推移。
2025年時点でも、地方労働者の平均賃金は都市部の85%未満です。
住宅価格だけが急上昇すると、地元住民が住宅を購入できなくなるリスクが高まるのです。
さらに地方では賃貸住宅の選択肢が少ないケースも多く、住み替えの余地が限られます。
その結果、「住み続けること自体が難しくなる」という問題が生じています。
もう一つ興味深い点があります。
今回の価格上昇率トップに並んだ地方郡の多くは、いわゆる観光地ではありません。
セカンドハウスやバケーションホーム向けの需要は、ほとんど見られない地域です。
住宅ローンのうち、非居住用が占める割合は5%未満にとどまっています。
つまり投資目的や別荘需要ではなく、「実需」が価格を押し上げているのです。
もちろん例外もあります。
アイダホ州のバレー郡のように、自然景観に恵まれた観光地では住宅の6割以上がセカンドハウスです。
このような地域でも価格は大きく上昇しています。
けれども全体として見ると、今回の地方価格上昇の主役は観光地ではない「普通の田舎」です。
では、都市部はどうだったのでしょうか。
カリフォルニア州オレンジ郡では、6年間で約55%の価格上昇となりました。
価格水準自体は高く、中央値は127万ドル前後です。
その一方で、上昇率という点では地方郡に及びません。
ロサンゼルス郡では、上昇率は約34%にとどまっています。
ニューヨーク市ブルックリンを含むキングス郡では、ほぼ横ばいでした。
この結果が示しているのは、アメリカの住宅市場が「どこでも同じように動く時代ではなくなった」という事実です。
安いエリアは安いなりに、独自のロジックで動いています。
その変化はすでに価格として顕在化しているのです。
今後の投資や居住を考える際、「都市か地方か」という単純な二択では足りません。
人口動態、雇用、税制、リモートワークの浸透度、そして価格の初期水準。
これらを総合的に見る必要があり、アメリカ不動産市場の主戦場は静かに、しかし確実に広がり続けているのです。
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