投資案件をメールマガジンで無料購読。
下記よりメールアドレスをご登録ください。
こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
アメリカの住宅市場で、いま静かに、けれども確実に進んでいる構造変化があります。
それは「機関投資家(Institutional Investor)が一戸建て住宅の購入市場から退場しつつある」という事実です。
ダラスを例に取ると、機関投資家は住宅ストック全体の9.2%を保有しているにもかかわらず、新規売出し物件の22.8%を占めているという数字が出ています。
つまり保有比率の倍以上の割合で売りに出しているわけで、彼らが「売り手」の側に回っていることは明らかです。
Invitation Homes(インビテーション・ホームズ)の2025年度の実績を見ると、この傾向がさらにはっきりします。
同社は年間で1,356戸の既存物件を売却する一方、新たに取得した2,410戸の「ほぼすべて」が新築物件だったと報告しています。
では、彼らはどこに向かっているのか。
Build-to-Rent(BTR)という選択肢
答えは「Build-to-Rent(ビルド・トゥ・レント)」、すなわち「既存の住宅を買って貸す」のではなく「最初から賃貸用として一戸建てを建てる」というモデルです。
AMH(旧American Homes 4 Rent)は自社開発プログラムの開始以来、14,000戸以上の新築賃貸住宅を市場に供給してきました。
Invitation Homesも2024年にBTRデベロッパーのResiBuilt Homesを買収し、年間約1,000戸のペースで賃貸専用住宅を建設しています。
なぜ「買う」から「建てる」への転換が起きているのか。
理由はいくつか重なっています。
まず、既存物件の価格がここ数年で大幅に上昇し、「中古を買って貸す」モデルの利回りが圧縮されてきたこと。
そして借入コストも高止まりしているため、高値で買い付けるよりも自ら建設するほうが経済合理性が高くなったのです。
トランプ大統領令という追い風
この流れを制度面から後押ししたのが、2026年1月にトランプ大統領が署名した大統領令です。
正式名称は「Stopping Wall Street from Competing with Main Street Homebuyers(ウォール街がメインストリートの住宅購入者と競合することを止める)」。
大手機関投資家が一戸建て住宅を大量に買い占めて賃貸に回す行為を制限するという内容です。
けれどもここに興味深い例外規定が設けられました。
「Build-to-Rent」として計画・許可・建設された賃貸コミュニティは、この規制の対象外とされたのです。
つまり政策としても「既存住宅の買い占め」には規制をかける一方、「新たに建てて貸す」ことは許容する、という明確なメッセージが出されたことになります。
個人投資家にとっての意味
では、この大転換は個人レベルの不動産投資にどう影響するのでしょうか。
一つ目は、在庫の増加です。
機関投資家が保有物件を売りに出すことで、市場に流通する一戸建て住宅が増えます。
これは買い手にとって選択肢が広がるということであり、価格交渉の余地も生まれやすくなります。
二つ目は、「競合の減少」です。
これまでオファーの場面で個人の買い手と競り合っていた機関投資家が、既存物件の取得から手を引きつつあります。
かつてのように現金一括のオファーに阻まれるケースが減っていくことが期待できます。
そして三つ目は、BTRコミュニティの増加が地域の賃貸市場に与える影響です。
新築賃貸住宅が供給されることで、エリアによっては賃料の上昇圧力が緩和される可能性があります。
賃貸物件を保有するオーナーにとっては、競争環境の変化を注視する必要があると思います。
「誰が住宅を所有するのか」という問い
Build-to-Rentの拡大は、住宅供給を増やすという意味ではポジティブな側面があります。
アメリカの慢性的な住宅不足に対して年間数万戸規模の新築賃貸住宅が加わることは、市場全体にとって歓迎すべきことです。
けれども同時に、「一戸建て住宅=持ち家」という従来のアメリカン・ドリームの形が変わりつつあるという側面もあります。
一戸建てに住んでいても、その家のオーナーは大手投資会社であるという風景が、静かに広がっています。
不動産投資においては、こうした構造変化の「波」を読み取ることが大切です。
機関投資家が去った市場には、個人投資家にとっての好機が生まれることもあります。
大きな流れの中で自分がどこに立つのか、考えるきっかけにしていただければと思います。
投資案件をメールマガジンで無料購読。
下記よりメールアドレスをご登録ください。