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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
先日、Cotality(旧CoreLogic)のエコノミストが発表した分析レポートが、なかなか興味深い表現を使っていました。
アメリカの住宅市場は、モーゲージの構造そのものによって「Handcuffed(手錠をかけられた)」状態にある、というのです。
「手錠」とはまた穏やかではない表現ですが、これはアメリカ特有の住宅ローン制度を理解すると、実によく的を射ていることがわかります。
30年固定金利という「特殊な仕組み」
アメリカのモーゲージといえば、30-Year Fixed Rate Mortgage(30年固定金利住宅ローン)が主流です。
借り入れた時点の金利が、30年間まったく変わらない。
日本の住宅ローンでも全期間固定型は存在しますが、アメリカほど圧倒的なシェアを占めてはいません。
けれどもこの仕組み、実は世界的に見るとかなり特殊なのです。
カナダでは5年ごとに金利が見直されるのが一般的です。
イギリスでは2年から5年の固定期間を経て、変動金利に切り替わります。
オーストラリアやニュージーランドも、短期の固定金利と変動金利の組み合わせが主流です。
つまり、「30年間、金利が一切動かない」という仕組みを国民の大半が利用している国は、先進国の中でもアメリカくらいなのです。
「お得な金利」が人を動けなくする
ここに、今の市場を理解する鍵があります。
2020年から2021年にかけて、アメリカのモーゲージ金利は歴史的な低水準に沈みました。
30年固定で2%台後半という、信じがたい数字です。
この時期に住宅を購入した人、あるいはRefinance(借り換え)をした人は、極めて低い金利を30年間にわたって「ロック」したことになります。
そして今、30年固定金利は6.4%を超えています。
「今の家を売って新しい家を買おう」
と考えた瞬間、この人たちは2%台の金利を手放し、6%台の金利を受け入れなければなりません。
月々の支払いがどれほど跳ね上がるかは、計算するまでもないでしょう。
これが、いわゆるLock-in Effect(ロックイン効果)と呼ばれる現象です。
学術的な推計では、このロックイン効果によって全米の住宅売買が年間100万件以上減少し、住宅価格は本来あるべき水準より5〜6%高く押し上げられているとされています。
けれども、状況は永遠にこのままではありません。
2026年初頭の時点で、ある変化が起きています。
モーゲージ金利が6%以上のローンを抱える人の割合が、3%以下のローンを持つ人の割合を上回りつつあるのです。
転職、離婚、家族構成の変化。
人生にはどうしても引っ越さなければならない場面があります。
低金利を手にした人たちも、時間の経過とともに少しずつ市場に戻ってきている。
Realtor.comのデータによれば、現在のアクティブリスティング(売出し中物件数)は全米で約110万件に達し、2019年以来の高水準となっています。
在庫が増えるということは、買い手にとって選択肢が広がるということです。
他国との違いが生む「投資のタイミング」
この話がなぜ重要かといえば、アメリカのロックイン効果は他国には存在しない、アメリカ固有の市場力学だからです。
カナダやイギリスでは、金利の変動が比較的早く市場に反映されます。
金利が上がれば売り手も買い手もすぐに行動を調整し、価格も流動性も速やかに変化する。
けれどもアメリカでは、過去の低金利が30年間という長い「記憶」として市場に残り続けます。
そうすると、市場の調整には時間がかかる。
裏を返せば、ロックイン効果が徐々に薄れていく今後数年は、在庫の増加と価格の安定化が同時に進む可能性があるということです。
これは、長期的な視点で物件を探している人にとって、見逃せないタイミングかもしれません。
アメリカの不動産市場を見るとき、金利の数字だけを追いかけていても、全体像はなかなか見えてきません。
「なぜ金利が上がっても在庫が増えないのか」
「なぜ価格が下がらないのか」
という問いの背景には、30年固定金利という制度が深く根を張っています。
仕組みを理解すると、同じニュースの見え方が変わります。
「手錠」が緩みはじめた今のアメリカ市場は、数字の裏にある構造変化に目を向ける価値があるように思います。
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