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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
今日は、ニューヨーク市長に就任したばかりのゾーラン・マムダニ市が打ち出した住宅政策と、その効果が実際に市民へ届くまでの時間軸について考えてみます。
結論から言えば、動きは早いものの、家賃の本格的な軽減を体感できるまでには少なくとも三年程度はみておく必要がありそうです。
マムダニ市長は就任直後から、矢継ぎ早に住宅関連の施策に着手しています。
市有地を住宅供給に活用するためのタスクフォース設置や、建設を遅らせてきた煩雑な規制の見直しなど、スピード感のある対応が目立ちます。
さらに、違法または不当とされる家主の行為を公にするための「家賃搾取」公聴会の開催も表明しました。
これらの動きから伝わってくるメッセージは明確です。
ニューヨークの住宅価格問題は待ったなしであり、とりわけ賃貸市場で追い込まれている人々を守る必要がある、という姿勢。
けれども、政治と住宅政策に共通する最大の壁は「時間」です。
どれほど大胆な構想であっても建設には年単位の時間がかかり、家賃水準全体に影響が及ぶまでにはさらに時間を要します。
専門家は供給側の効果が見え始めるまで最低三年は必要だと指摘しています。
この三年という期間はマムダニ市長の一期目の任期とほぼ重なる、かなり楽観的な想定ですが、そんなマムダニ市長の政策の中で最も即効性があるとされるのが「家賃凍結」です。
ニューヨーク市内には、家賃規制や安定化の対象となる物件が100万戸以上存在します。
順調に進めば、2026年10月更新分から家賃を据え置くことも理論上は可能です。
これは住宅政策としては異例のスピードであり、家計が限界に近づいている借主にとってはありがたい話かもしれません。
現状、2025年第2四半期のニューヨーク市の平均募集家賃は3,491ドルに達しています。
これは一般的な世帯収入の約55%に相当し、住居費としては極めて重い水準です。
さらに、1,100ドル以下の低価格帯物件の空室率は0.7%まで落ち込んでいます。
その一方でシェルターに頼る家庭の中で、親子世帯が占める割合は増え続けています。
働く家庭でさえ住居を維持できない現実があるのです。
家賃規制物件であっても安心とは言えず、2025年には滞納率が17%近くまで上昇しました。
家賃凍結は、こうした世帯の支出を一時的に固定する効果があります。
けれども実際に凍結を決定するのは、毎年更新率を定める家賃ガイドライン委員会です。
前市長の任期末には委員の入れ替えが試みられましたが、結果的には失敗しました。
その結果、マムダニ市長には委員構成を変える余地が生まれています。
理論上は、ゼロ%更新を実現できる環境に近づいているとも言えます。
同意に、ここで参考になるのがミネソタ州セントポールの事例です。
同市では2022年に家賃上昇を年3%に制限する制度が導入されました。
導入直後、周辺都市とは対照的に家賃は一時的に下落。
けれどもその後新規建設が急減し、2024年には住宅許可件数が80%も落ち込みました。
供給が止まれば、いずれ価格は再び上昇します。
ニューヨークでも、小規模オーナーを中心に同様の事態を懸念する声が強まっています。
現在、市内には5万戸以上の家賃安定化物件が空室のまま放置されています。
多くは修繕コストに見合わず、市場に出せない状態です。
家賃凍結が続けば、こうした物件が恒久的に市場から消えるリスクもあります。
短期的な救済と引き換えに、長期的な供給減を招く可能性がある点は慎重に見極める必要があります。
本質的な解決策は、やはり住宅供給を増やすことです。
マムダニ市長は今後10年で20万戸の手頃な住宅を供給する目標を掲げています。
数字としては大胆ですが、仮に順調に進んだとしても効果が出るのは2028年以降と見られています。
しかも、ニューヨーク全体では今後10年で約50万戸不足すると推計されています。
その一方で、民間開発の役割も無視できません。
市場価格帯や高級物件であっても、供給が増えれば中間層から下位層へと需要が連鎖的に移動します。
この「フィルタリング効果」により、全体の家賃水準は下がりやすくなるものです。
とどのつまり、「供給はすべて良い供給」なのです。
この点で参考になるのがテキサス州オースティンの事例です。
同市ではパンデミック前から建設が進み、需要増加に合わせて供給も拡大した結果、2022年後半から家賃は下落に転じました。
建設ラッシュから約3年後、実際の家賃に反映されたのです。
けれども、ニューヨークはオースティンのように簡単にはいきません。
規制、土地価格、人件費、訴訟リスクなど、あらゆる面で条件が異なります。
。。。
この住宅問題については、供給が始まって初めて時間のカウントが始まりますが、ニューヨークではまだ本格的な建設ブームは始まっていません。
今はまだマムダニ市長を先頭に、政策の準備段階がようやく整いつつあるという段階。
テナントにとって意味のある家賃軽減が実感できるまでには、なお数年を要する可能性が高いのではないでしょうか。
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