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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
前回までは、プロフォルマを読み解くための理論や計算式についてお話ししてきました。
知識という名の装備を整えたところで、今日は一歩踏み込んで「実戦」に移りましょう。
私の手元に、あるGPから送られてきた244ユニット規模のプロジェクトの最新プロフォルマがあります。
一見すると、非常に緻密に作り込まれたエクセルの芸術品のように見えます。
けれども投資家としてこの数字の森に分け入る際、私たちは単なる「観客」であってはいけません。
鋭いメスを持った「外科医」のように、数字の矛盾をあぶり出す必要があります。
今日は、このの収支計画書を例に、私がどのような視点で添削(レッドライン)を入れていくのか、そのプロセスを公開します。
これはあなたの資産を守るための「精巧なフィルター」を通す作業だと思ってください。
1. 収入の「伸びしろ」は現実的か?
このプロフォルマを見ると、ユニットのリノベーションによって家賃を大幅に引き上げる計画が立てられています。
具体的には、現在の家賃から月額数百ドルのアップを見込んでいます。
ここで私が最初に入れるツッコミは、「周辺の競合物件との比較(コンプス)」です。
リノベーション後の家賃が、そのエリアの新築物件の家賃に近づきすぎていないでしょうか。
もし新築との差がわずかであれば、入居者は新しい物件に流れてしまいます。
「家賃が上がる」という数字の裏側にある、入居者の心理を読み解く力こそが、投資の「安全弁」となります。
2. 運営費の「見積もり」に甘さはないか
次に目を向けるべきは、運営費(Operating Expenses)の項目です。
特に最近のアメリカでは、保険料(Insurance)と固定資産税(Real Estate Taxes)の急騰が大きなリスクとなっています。
この「Derby Park」の計画書では、保険料の上昇率が年率3%程度に設定されています。
けれども昨今の気候変動や再保険市場の混乱を考えると、これは少々楽観的すぎると言わざるを得ません。
「もし保険料が初年度に20%跳ね上がったら、キャッシュフローはどうなるのか?」
こうした厳しい視点で経費を再計算することが、プロジェクトの「防波堤」を強固にします。
3. キャップレートの「出口」に魔法がかかっていないか
このプロフォルマで最も慎重に見るべきは、売却時の「Exit Cap Rate」です。
購入時のキャップレートが5.14%程度であるのに対し、5年後の売却時もそれに近い数字で設定されています。
一般的に、物件は築年数が経過するほどリスクが高まるため、出口のキャップレートは入口よりも高く設定するのが鉄則です。
「5年後の市場が今よりも冷え込んでいる可能性」を排除した計画は、非常に危険です。
私はここで、
「出口のキャップレートをさらに0.5%から1.0%上乗せしたシナリオ」
を要求します。
それでも十分なリターンが出るのであれば、そのプロジェクトには真の「強靭さ」が備わっていると言えます。
4. 資本的支出(CapEx)の「隠れたコスト」
リノベーション費用として1ユニットあたり一定の金額が計上されています。
けれども244ユニットという規模を考えると、予期せぬ設備の故障や共用部の修繕が発生する可能性は極めて高いです。
「インフレによる資材費や人件費の高騰は、この予算内で吸収できるのか?」
プロフォルマ上の数字はあくまで「点」ですが、実際の運営は「線」であり、常に動いています。
不測の事態に備えた「コンティンジェンシー(予備費)」が十分に確保されているか。
ここを確認することが、投資家としての「羅針盤」を正しく保つことにつながります。
5. ウォーターフォール(利益分配)の誠実さ
最後に、利益がどのように分配されるのかを確認します。
投資家にまず優先的な配当(Preferred Return)が行き渡る構造になっているか。
そして、GPが受け取るボーナス(Promote)のハードルが適切に設定されているか。
受け取ったプロフォルマの構造を詳しく見ると、一定の利回りを超えたところでGPの取り分が増える仕組みになっています。
これが「投資家の利益最大化」と「GPのモチベーション」を正しく一致させているか。
数字の配分に潜む「インセンティブの歪み」を見抜くことが、パートナーシップにおける「安全装置」となります。
まとめ
今日の添削シミュレーションのポイントを整理します。
- 収入の妥当性: 周辺コンプスと比較し、家賃アップの根拠を疑う。
- 経費の現実味: 特に保険料と税金の上昇リスクを厳しく見積もる。
- 出口の保守性: 出口のキャップレートをあえて高く設定して検証する。
- 予備費の確保: リノベーション費用の高騰に対応できる余裕があるか。
- 分配の公平性: GPと投資家の利益が同じ方向を向いているかを確認する。
プロフォルマは単に眺めるものではなく、自分の手で「叩いて音を確認する」ものです。
叩いた時に鈍い音がする場所があれば、そこを徹底的に突き詰めてください。
GPに鋭い質問を投げかけ、彼らがそれに対してどれだけ論理的かつ誠実に答えるか。
その対話を突き詰めるのが最短コースだと思います。
明日に続けます。
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