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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
先日、Redfinが興味深いデータを公表しました。
アメリカの住宅オーナーが自宅に住み続ける年数の中央値が、なんと12年に達したというのです。
20年前はおよそ6〜7年だったことを考えると、ほぼ倍。
つまり「動かない」ことが、いまやアメリカ不動産市場の最大のテーマになっていると言っても過言ではありません。
「なぜ動かないのか」と問われれば、答えは明快です。
Lock-In Effect(ロックイン効果)、すなわちパンデミック期に手にした超低金利モーゲージを手放すことへの恐怖が、オーナーたちの足を縛っているのです。
3%の黄金時代が生んだ「動けない病」
2020年から2022年にかけて、アメリカのモーゲージ金利は歴史的な低水準に沈みました。
30年固定で2%台後半という、今から見れば夢のような数字です。
あの時期に家を買った人たち、あるいはリファイナンスをした人たちは、月々の支払いが驚くほど軽い。
けれどもいま新たにモーゲージを組もうとすると、金利は6%前後。
仮に同じ価格帯の家に引っ越したとしても、毎月の支払いが数百ドルから1,000ドル以上跳ね上がる計算になります。
「もっと広い家に住みたい」
「職場に近い場所に引っ越したい」
という願望があっても、数字を見た瞬間に
「やっぱり今のままでいい」
と思い直す。
この心理が、全米規模で発生しているわけです。
学術的な推計では、このロックイン効果によって年間100万件以上の住宅売買が消失し、住宅価格を5〜6%押し上げたとされています。
供給が出てこなければ、価格が下がりようがない。
シンプルな需給の法則がここに表れています。
ロックイン効果は「溶け始めて」いる
けれども、永遠に動かないわけではありません。
2026年に入り、少しずつ変化の兆しが見えてきました。
ポイントは「金利の分布」です。
パンデミック期に3%以下で組んだモーゲージを持つ人の割合と、その後6%以上で組んだ人の割合が、いよいよ逆転しつつあります。
つまり、「今の金利で組んだから、動いても損をしない」という層が着実に増えているのです。
在庫数(Inventory)を見ても、2024年から前年比プラスが続き、2026年3月時点では前年同期比で約8%増。
まだパンデミック前の2019年水準には17%ほど届いていませんが、回復のベクトルは確かに上を向いています。
新規リスティング(New Listings)も、春のシーズンを前にして前年比約10%増と、パンデミック前以来の強い出だしを見せています。
「動かないオーナー」が生む投資チャンス
ここからが、投資の視点で大切なところです。
オーナーが動かないということは、売りに出る物件の「質」が変化するということでもあります。
どういうことかといえば、積極的に売りたいわけではないオーナーが大半を占める市場では、実際に売りに出てくる物件は「売らざるを得ない理由」を持っている場合が多いのです。
転職、離婚、相続、あるいは物件の老朽化。
こうした「やむを得ない売却」には、価格交渉の余地が生まれやすいという特徴があります。
そしてもう一つ。
オーナーが動かないということは、賃貸市場にとっては追い風です。
「買えないから借りる」「動けないから今の家を貸す」という二重の力学が働き、賃貸需要は底堅く推移しています。
とりわけ中西部(Midwest)の市場に注目しています。
イリノイ州で前年比+4.91%、ウィスコンシン州で+4.78%と、全米平均の+0.7%を大きく上回る価格上昇を記録している一方で、フロリダ州は-2.36%、コロラド州は-1.31%とマイナス圏に沈んでいます。
「どこで買うか」によって、結果がまるで変わる。
これがいまのアメリカ不動産の最も重要な真実であり、だからこそ現地の空気を読む力が問われるのだと感じます。
動かない時代の処方箋
12年間動かないオーナーたちの存在は、市場に「硬直」をもたらしています。
けれどもその硬直は、永遠に続くものではありません。
金利が下がれば氷は溶け、在庫は増える。
そしてその「溶け始め」の瞬間こそが、準備をしていた人にとっての最良のタイミングになり得ます。
- Lock-In Effect(ロックイン効果)により、オーナーの居住年数は中央値12年と過去最長水準に
- 売り物件の多くは「やむを得ない売却」であり、価格交渉の余地が比較的大きい
- 中西部が価格上昇をリードし、フロリダやコロラドはマイナス圏 ― 地域選定が成否を分ける
- ロックイン効果は徐々に薄れつつあり、在庫の回復は「いつ」ではなく「どこから」の問題に移行している
市場が動き出す前に、自分自身の「投資基準」と「行動の引き金」を明確にしておく。
そこを怠らない姿勢が、この硬直の先にある好機を掴むための鍵になるように思います。
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