こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
1031 Exchangeについてシリーズでお伝えしています。
昨日までは
1.1031 Exchangeは自分の居住う物件には適用されない
2.Personal property(動産)には適用されなくなった
3.等価交換の「等価範囲」は広い
4.Delayed Exchange:「後で交換」もアリ
5.交換する物件を定める(45日間)
6.選んだ物件をクローズする(180日以内)
7.残高は課税対象に
といった7つのポイントをお伝えさせて頂きました。
1031 Exchangeを使う際にはほとんどの場合が「Delayed Exchange」を適用することになる、とはお伝えしたとおりです。
ちなみに、ここまでお伝えしてきた1031 Exchangeを日本人(米国で市民権・永住権を持たない方)が適用する場合は、法人名義の物件に限られますので注意が必要です。
個人名義の物件に対して1031 Exchangeを適用する場合は法人名義(LLC等)に変更するしかありませんが、
個人名義 ⇛ 法人名義
この名義変更の段階で、日本の税法では
「個人の手から離れた(売却された)」
と見なされて、その時点で譲渡課税の対象になると思います(アメリカではなく、日本の税法の話です)。
その為、もしも日本で暮らす日本人投資家の皆様がこの1031 Exchangeを検討する場合は、最初から法人名義で物件を購入するのが得策ということになります。
ただしこの場合は名義が法人になるということは「4年間減価償却ルール」は個人所得には適用されないと思いますので、よく検討する必要があります。
。。。
そこで今日は、シリーズの最後として「バケーションホームの場合」についてお伝えさせて頂きます。
バケーションホームに関する1031 Exchangeの適用方法については税法が度々変更されていますが、その概要を時間軸と共に見ていきましょう。
住居用との合せ技
この点はアメリカに居住する方々に関わるアメリカの税法となりますが、
「夫婦世帯の住居物件を売却した場合、キャピタルゲインは$500,000まで控除できる」
このようなルールがあります。これを受ける条件としては
「過去5年間の間に主な住居用物件として2年以上使用していたこと」
ですが、日本円で約5,500万円にも及ぶような控除額とはすごいですね。。
アメリカ政府が住居物件の売買を促進して国内の景気を刺激したい思惑がよく見て取れます。
そして、このキャピタルゲイン課税の基礎控除は「キャピタルゲイン課税を繰り延べる」という1031 Exchangeとは根本的な違いがあります。
かつ、この基礎控除はセカンドハウスやバケーションホームには適用されないルールです。
ところがここには、かつて「税法の抜け穴」がありました。
そのスキームはこうです。
① 自分が暮らす住居物件を購入する(そこで暮らし続ける)
② 風光明媚な土地で別にバケーションホームを購入する
③ 1031 Exchangeを使ってバケーションホームを別のバケーションホームと交換する(税の繰り延べを続ける)
④ リタイヤする時が来たら「①」の自宅を売却し、「③」のバケーションホームに夫婦で引っ越す(ここで最初の$500,000控除を使用)
⑤ 「③」 を自分たちの住居用として使い、最後に「③」のバケーションホームを売却する際に「二度目の$500,000の控除額を適用して、1031 exchangeによるキャピタルゲイン課税の繰り延べ諸共消し去る」
。。。
繰り延べた税金をすべて消すことすらできる、正に時効だから書けるような税法の抜け穴です。
ここに、IRS(アメリカ内国歳入庁)のメスが入りました。
今でもバケーションホームに1031 Exchangeの適用は可能
かくして、以前は
.1031 Exchange
.妻帯者の$500,000控除額
の合せ技でキャピタルゲイン課税を消し去ることも出来ましたが、2004年にバケーションホームへの適用に関する税法が改正されることとなりました。
とはいえバケーションホームへの1031 Exchangeの適用が完全に禁止になったわけではありません。
例えば、
1.バケーションホームを購入し、自分たちでたまに使う
2.私用を中止し、賃貸物件に切り替えて半年なり一年なり運営する
3.そこから1031 Exchangeを使って他の物件と交換する(キャピタルゲイン課税を繰り延べる)
このような資産運用は可能です。
ただしここで問われるのは「事実」です。
「私、バケーションホームを賃貸物件にして賃貸市場に出したのですが、過去一年間にテナントがつかなかったのです。
でも私の意図は確かに賃貸物件用でしたので、このまま1031 Exchangeを使いますね。」
この主張はまず通りません。
「では賃貸用物件に切り替えてから、どれくらいの期間以上賃貸実績が出来れば1031 Exchangeを使えるようになるんですか?」
といえば、ここに絶対基準はありません。
目安として半年以下はまず通らないと思いますが、理想は一年以上でしょうか。
すぐには引っ越せなくなった
そしてここもポイントですが、例えばバケーションホームが無事に賃貸実績を十分に出して、そこから1031 Exchangeをもって新しい物件を取得したとします。
その物件はあなたのセカンドハウス、もしくは完全に自分の居住物件とするために購入したとしても、すぐに引越すことは出来ません。
この場合は「自分の居住用の物件を手に入れるために1031 Exchangeを使用した」と見なされてしまうのです。
(*1031 Exchangeは投資物件にしか使えないことを思い出してください)
ここに引っかからないためには、
(1)1031 Exchangeで取得した物件を、取得日から12ヶ月間は他人に14日間以上貸し出さねばならない
(2)空室期間中の個人使用は14日間を超えない、もしくは12ヶ月間の賃貸期間の10%を越えてはならない
これらの条件を満たす必要があります。
いずれにせよ、新しい物件を12ヶ月間は賃貸用に使い続けねばならないのです。
すぐに控除は使えなくなった
そして最後のポイントですが、前述のように2004年以前であれば
1031 Exchangeで交換を繰り返してきた最後のバケーションホームに、夫婦が自分たちで暮らす
↓
$500,000を適用し、繰り越されてきたキャピタルゲイン課税を消す
という合わせ技が可能でした。
この点も厳しくなり、1031 Exchangeで取得した物件に引っ越した後は「その物件取得から5年間以内に売却した場合は控除額($500,000)を適用できない」、と改正されています。
以前はすぐに適用できたものが、現在はすぐには適用出来なくなったわけです。
それでも全く不可能になったわけではありませんし、5年くらいなら待っても全然問題ないかもしれませんね。
日本の税法なら完全に駄目と改正されそうですが、あくまでも不動産の流動性を確保したいアメリカ政府の思惑がここでも見て取れます。
今回の1031 Exchangeがあなたの資産運用のお役に立てれば。
免責
● 今回の1031 Exchangeシリーズは佐藤の個人的な知識であり、節税のアドバイス目的はありません。
● 実際に1031 Exchangeの適用を検討する際は、公認会計士にご相談ください。
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