こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサル タントとして働く佐藤です。
全国不動産協会より昨年2019年末、2019年12月のアメリカ中古不動産販売実績が発表されています。
いつもお伝えする通り、不動産需要の三大要素である
人口
人口動態
賃金・雇用機会
は不動産価値に大きく影響してきます。
この中で人口と人口動態は概ねアメリカのどの都市でも堅調に上がりつつあります。
市場の大底が広がり続けているおかげで、アメリカ全体では大きく見誤らない限りは不動産価値は安定してるものです。
また人口と人口動態は長期的にその不動産地域市場に影響を与える要素である為、先を読みやすい特徴があります。
その一方で賃金と雇用機会は経済状況によって大きく変わってきますから、比較的短期的に不動産市場価格に影響してくるものです。
その視点からアメリカ中古不動産市場を見ると、2019年の締めくくりは予想以上に上出来だったように思えます。
今日は、アメリカ中古不動産市場の2019年の締めくくりの傾向を確認すると同時に本年の動きに予想をつけていきましょう。
2019年12月のアメリカ中古不動産市場

まずは全体的な傾向ですが、2019年12月の住宅販売実績は前月11月度比で3.6%伸び、554万件が売買されています。
この3.6%の伸びは非常に興味深いところです。
通常は12月といえば物件売買は11月と比較すると減少するのが通年の傾向になっています。
11月末のサンクスギビング
12月末のクリスマス
と、この時期は一年で最も不動産市場がスローになりやすい時期。
12月は年末年始が絡むこともあり、積極的な売買は見受けられません。
また住宅販売実績そのものは
新築物件
中古物件
の二つからなりますが、中古物件だけに絞ってみると2019年12月の販売数は534万件でした。
この534万件という中古物件販売数そのものは前年2018年12月のそれとほぼ変わりがありません。
ところが2019年11月の中古物件販売数と比較すると、なんと10.8%も伸びたことになります。
つまり、2019年11月は相当落ち込んでいた中古物件販売が年末の12月には大きく回復して2019年を締めくくったということです。
そして2019年末の販売実績が大きく回復して締めくくられたのには確固たる理由があります。
失業率の低下

まずは大きく影響を与えた因数の一つはやはり失業率の低下です。
トランプ政権の元、アメリカの失業率は3.5%という低水準に留まっています。
この3.5%という低水準は過去50年の中で最も低い推移です。
そしてグラフを見ると一目瞭然ですが、
不動産価格
不動産販売数
この両方とも失業率に大きく影響される傾向があります。
雇用が安定するということは収入が安定するということです。
懐が温まる時に人は購買意欲が高まり、その意欲は不動産物件のような高額な買い物にも意識が向けられます。
今まで貯めていた頭金を入れてローンを組み、その後に始まる毎月のローン返済を継続できる資源が雇用で確保されるからです。
また仕事が安定している条件は融資元の金融機関にとっても不可欠な判断要素です。
いくら頭金の入金が出来たとしても、その後のローン返済の資金が見えないのであれば融資することは出来ません。
結果としてアメリカの今の失業率の低さは不動産需要の三大要素の一つである
賃金・雇用機会
を押し上げる要因となり不動産需要が高まってきたわけです。
中古物件が一ヶ月で10.8%も伸びたというのは、失業率低下による不動産市場への影響がハッキリと数字に現れたということになります。
低い金利

そして3.5%という低い失業率が不動産需要を押し上げる一方で、もう一つの購買意欲を高めている要因があります。
それはモーゲージ金利です。
日本の低金利には及ばないものの、アメリカの金利はFRBの政策により随分低くなっています。
本年2020年1月半ばの平均金利は3.65%と未だ低い水準にあり、この水準は昨年2019年9月頃と比較するとやや高くなってはいるものの、近年の傾向からすれば十分に低い水準です。
2010年までの過去10年間をざっくり見ると、平均金利が最も低かったのは2016年の3.65%でした。
反対に最も高かったのは2010年の4.69%、そして2018年の4.54%が続きます。
実に昨年2019年12月の金利は一年前と比較すると約1%も下がっており、この低金利が購買意欲を刺激したことは間違いありません。
結果として中古物件売買だけで見ても一ヶ月間で10.8%伸びており、
低失業率
低い金利
この二つの因数が2019年末の不動産販売実績に多大な影響を与えたことがよく分かります。
住宅不足は続く

その一方で相変わらずの不安要素となっているのは住宅不足です。
物件在庫の推移を見てみると、在庫不足に伴って物件価格が上がる傾向がよく分かります。
その実、2019年12月の住宅供給は3ヶ月でした。
例えば60件の物件があり、毎月10件売れたとします。
この場合の住宅供給は6ヶ月です(在庫が6ヶ月もつ)。
これに対して住宅供給が3ヶ月ということは、60件の物件に対して毎月20件売れているということです(在庫は3ヶ月しかもたない)。
この在庫については1年前の2018年12月には3.7ヶ月でした。
1年後の2019年12月が3ヶ月ということは確実在庫は少なくなっており、住宅不足は続いているということになります。
結果として増える人口から需要そのものは増え続ける状態ですから、少ない在庫に対してどうしても価格が上がってしまう結果となるわけです。
。。。
本年から本格的に不景気に突入するとの予想から2019年年末の際にも買い控えは見受けられると思いましたが、それ以上に
低失業率
低金利
これら二つが好影響となったことが分かりました。
物件価格そのものは2019年12月の中古物件価格は昨年比で7.8%上昇の$274,500となっています。
本年の動きとしてはこれら低失業率と低金利が現状を維持する場合、夏のピークタイムに向けてはより
在庫不足 ⇛ 物件価格上昇
の結果となることはほぼ間違いないものと思われます。
本年は大統領選に向けた米国経済の動きを注視しつつ、引き続き不動産市場への影響を観察していきましょう。
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