こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
商業物件の中でもオフィス物件についてお伝えしています。
数ある商業物件の中でも住居を目的とするマルチファミリー以外の
Office(オフィス)
Industrial(インダストリアル)
Retail(リテール)
の3つの中で、オフィス物件はその数が最も多いと言えます。
そして投資家がオフィス物件に投資を好むのには、そこには明確な狙いがいくつかあります。
そこで昨日はオフィス物件への投資が好まれる理由として
契約期間が長い
相当なキャピタルゲインが期待出来る
という2つをお伝えしました。
「1ユニットあたり$1,000 ~ $10,000単位の家賃を3年以上という長い期間にわたり安定して受取ることができる」
まずはここがオフィス物件運営が安定しやすい要因の一つです。
しかも厳密には定額で契約期間中受け取るわけではなく、小さめのオフィスでも
1年目 … $1,600
2年目 … $1,650
3年目 … $1,700
というように、毎年の値上げを前提とした家賃が一番最初に定められるのです。
家主としてはインフレ率を加味して家賃を設定しており、平均的なインフレが継続される見立ての元に毎年の更新後の家賃まで決められることになります。
結果として一度賃貸契約が結ばれると、長期にわたり収入が安定するのです。
また家賃収入と同様に、或いは家賃収入よりも遥かに期待できるのがキャピタルゲインです。
特に都市の中でもビジネス街として多くの労働者が集まる地域では、その需要から結構な将来のキャピタルゲインが期待できます。
通常の試算では平均値2~3%あたりで見立てることになりますが、商業物件の場合は金額の桁が違うだけに結構なキャピタルゲインを得ることができるのです。
オフィス物件について、今日も続けます。
Tax Shelter(節税対策)

オフィス物件に投資する際に投資家が期待するのは節税対策としてのDepreciation(減価償却)の効果です。
「収入」というと普通は「現金が手元に入る」という発想にばかり焦点がいきます。
オフィス物件の場合はテナントからの家賃がこれに相当します。
けれども不動産投資の成功術の観点からすれば、減価償却もまた「収入」と捉えることが適切です。
ある一定期間に分割して経費計上し続けるということは、その経費計上と同額の売り上げが控除されるわけですから、その控除額に対して本来支払われるはずだった税金が手元に残ることになります。
支払うはずだった税金が手元に残るということは、それは収入を得たことと同義なのです。
言い換えると、売り上げを上げることばかりのみならず経費計上して税金を少なくすることもまた収入の一つと考えることが出来ます。
そして不動産の魅力の一つは、ご存知のように固定資産に分類される物件を法廷年数に沿って減価償却することで一定額を毎年経費計上することにあります。
一定期間、節税という名の収入を上げることが出来る
アメリカの場合、法定耐用年数は
住居物件 … 27.5年
商業 … 39年
です。
例えば$10,000,000の商業物件で
建物 … $8,000,000
土地 … $2,000,000
の価値だったとしましょう。
減価償却の概念は劣化することのない土地には適用されませんが、建物に対しては
$205,128($8,000,000 / 39年)
と日本円にして約2,000万円の金額を39年にわたり経費計上できることになります。
結果としてオフィスビルに対する収入から$205,128が差し引かれ、その分の税金を支払わない結果となります。
数字を簡単にして例えば$200,000の減価償却費に対して30%の税金が節約できたのなら、金額にすると
$60,000($200,000 × 30%)
もの節税が可能であり、言い換えると「$60,000の追加収入が発生した」ことと同義になるわけです。
またオフィス物件の場合、厳密にはビルの建物のみならずChattel depreciation(動産減価償却)という概念が適用されます。
物件内の動産に対し、それぞれの法定耐用年数(通常はいずれも5年以上)に応じて経費計上ができます。
かくしてオフィス物件では1年を通して結構な金額を経費計上することが可能となり、家賃収入から他の費用と共に差し引くことで税金を極めて少額に、あるいはゼロ税金で運営できる場合もあるのです。
あるオフィスビルの話

一つ実例を上げます。
2012年のこと。私(佐藤)は商業物件売買の取引に関わっていました。
時は不動産バブル崩壊後の真っただ中、過去約5年間にわたりアメリカ不動産市場で物件価格が下落していた時期です。
その2012年が底値になることは少し後に知ることになりますが、当時はすでに随分購入しやすい時期でした。
その好機に商業物件売買に関わっていたのですが、とあるオフィスビル物件が本来は$10,000,000であったところが$7,000,000で出されたのです。
そのオフィスビル物件に内覧に行った時のこと。一つ興味深いことに気づきました。
そのオフィスの最上階フロアにある著名な不動産デベロッパーが入居していたのですが、話を聞くとそのビルはもともとこの不動産デベロッパーが所有していたというのです。
この形態はこちらでお伝えしたSale-Leaseback(セールリースバック)です。
このことを金融知識なしにみると
「自社ビルを手放して今は反対に家賃を支払う身分とは。この不動産デベロッパーは大丈夫かな。。」
と思ってしまいそうです。
実際のところこの不動産デベロッパーはビルを2006年まで約20年にわたり所有しており、その間に当然ながら毎年の減価償却で収益の一部を消していました。
そして2006年の絶頂期に売却し、そのキャピタルゲインをたっぷり含んだ売却益をもって次の大きなプロジェクトに投資していたのです。
そこから収入もどんどん大きくなりますが、今度は最上階の広いフロアの高額な家賃がそのまま経費計上となります。
かくして、このデベロッパーは毎年支払うべき税金の相当額を節税し続けながら拡大を続けていたわけです。
このように減価償却は成長戦略に使われることがしばしばあります。
オフィス物件の減価償却は間違いなく、不動産投資家にとっても大きな魅力の一つと言えるのです。
明日に続けます。
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