こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
アメリカ不動産市場全体の傾向ですが、5月に住居物件売買契約を開始した件数が大幅に戻っているようです。
これは移動規制がある程度緩和された流れで売買の動きが再開されたことを示しています。
そして5月に開始された契約は早くても6月、多くは7月以降にクロージングになると思います。
結果として、8月や9月に目にする統計では6月、7月のクロージング件数が大幅に増えているはずです。
この6月の結果が一番早く段階で7月中旬には出てきますのでその内容をよく見てみたいと思いますが、
Pending(売買契約の最中)数の増減
物件価格の推移
この2つをもって、もう少し先が見通せるようになるかと思います。
とはいえ、仮に6月のアメリカ不動産業界の実績が明かるい兆しを見せていたとしてもそれを鵜呑みにするにはいきません。
以前からお伝えするようにこの夏までの市場の動きである程度先が見えてくるとは思いますが、それでも先に何が起こるのかを正確に見通すことは誰にもできないからです。
著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏ですら
「先に何が起こるか分からない」
と最近の株主総会で発表しています。
経済を人並み以上に俯瞰し続けているバフェット氏ですら世界経済が一斉に停滞することか起こり得ることが見えないと断言しているのです。
(へたに煽らないように口にしない、という方が正しいかもしれません)
ちなみに過去の1929年の大恐慌の時に、その数ヵ月後に市場が大きく回復する様子を見せました。
けれどもその後に株価は再び続落し続けています。
そこで正確に先は見えないながらも、ことアメリカ不動産に関していえばここから価格がさらに下がるのか回復するのか、どちらなのかと言えば、
「下がる可能性の方が高い」
と私(佐藤)は考えています。
どのくらいの割合で下がるかを正確に見通すことは出来ませんが、少なくとも価格のベクトルはしばらく下を向き続けるように思うのです。
そう思う理由について、ここから先でお伝えすることは私(佐藤)が個人的にみている最悪のシナリオの一つであり、それが実現するかは保証するものではありません。
むしろ、願わくは外れてほしいものです。
けれども実体経済の動きをみていると、2017年以降に深刻化しだしだ不動産バブル崩壊の時と同じ引き金が発動しないともいえないように見受けられます。
そこで今日から、
「これからの経済の流れで起こり得るシナリオ」
そして
「何が原因でアメリカ不動産価格を下げる可能性があるのか」
について見ていきましょう。
最初に言及しておきたいのは実体経済の動きについてです。
多くの人々に見えていないお金の流れ

「手元の現金を安全に増やしたい」
そんな願いは誰にでもあるものではないでしょうか。
少し前のアメリカでは定期預金でも随分利息がついていました。
今でも覚えていますが、2006年あたりでも定期預金で6%以上の利息がついていたものです。
それと比べると今の利息は目も当てられないくらいですし、この項を書いている時点でもメガバンクですらよくて0.1%台です。
地方銀行で出している掘り出し物でもよくて1%台でしょう。
けれども
「手元の現金を安全に増やしたい」
このように考える人々は
「金利が低くてもただ寝かせるよりはマシ」
「安全な定期預金にしておこう」
そんな風に考えます。
「それ以上安全に増やせる方法はないから」
との思いでなけなしの現金を定期預金に入れるのです。
ところがです。
安全策を取りつつも少しでもお金を殖やしたい、と考えているはずの人々が本質的には
「ほんの少しの金利の為にかなりのハイリスクを取っている」
ことを理解している方々はさほど多くないように見受けられます。
銀行の本業の一つは「お金を貸して手数料を頂く」ことです。
定期預金に利息が伴うのは、定期預金に預けた人々のお金を銀行が運用しているからに他なりません。
そして問題は、
「定期預金に預け入れたお金を銀行が誰に融資しているのか誰も知らない。」
ことです。
預け入れた人が日常の生活を送る間に、そのお金は確実に誰かに貸し出されています(さもなくば利息は生まれない)。
そして
「安全策のつもりで過去に預けたお金が、実際はリスクの高い融資先に貸し出されていた」
ことは大いにあり得ることを知っておく必要があります。
例えば、
「安全策をとって低金利でも定期預金に預け入れたい」
このように考えている人が今の時期に
デルタ航空
アメリカン航空
ボーイング
ロールスロイス
これらの会社の株を購入したいと思うでしょうか?
ご存知のようにこれら航空関連業界は先の見通した立たない今、株価を大きくさげています。
そうすると安全策を取りたい人々がこれらの株を購入することはまずないでしょう。
けれども安全策を取りたい預金者の心とは裏腹に、預金先の銀行が過去にあなたの代わりに大企業に貸し出しており、その大企業が今は逼迫した状態にあるかもしれないのです。
そして今は航空業界のみならず、ありとあらゆる企業が多くの借り入れを必要としています。
国を代表するような大企業ともなれば、公的資金が注入される事態も考えられるでしょう。
つい最近のよい例が6月29日に経営破綻したシルク・ドゥ・ソレイユです。
個人的にもショックでしたが、興行収入がなくなった為に約9億ドル(約960億円)の債務返済が難しくなったとのこと。
中国企業とカナダのケベック州貯蓄投資公庫が3億ドルを投じ、カナダ政府のインベストメント・ケベックからも2億ドルを調達することで再生を進めるようですが、ここがまさに「読み切れない部分」の一つではないでしょうか。
今後はシルク・ドゥ・ソレイユのように1000億円規模の債務を抱えながら
「すみません、借金返済ができません」
と経営破綻する企業が増えてくることは避けられないと思うのです。
そしてこの構図は紛れもなく、いつか来た道です。
ここから、不動産価格の下落へとつながるシナリオが見えてきます。
明日に続けます。
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