昨年以来、米ドルで資産運用を志す方々からのコンサルティング依頼が急増しています。
弊社ではアメリカ不動産コンサルティングに加え、州規制当局に登録されるRegistered Investment Advisor (RIA)としてアメリカ国内での資産運用全般のコンサルティングも提供しており、内容は不動産投資以外となりますが、初心者の方々からのご質問を総括する意図で株や債券に関するまとめ記事を1月7日から期間限定であげさせて頂きます。
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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
先日、カリフォルニア市場の動向を受けて
「この価格上昇は不自然」
「低金利が後押しして急激にバブル化した」
という趣旨でお伝えしていました。
その後に
「決して不自然ではなく、順調な回復では」
「低金利は健全に働いているのではないか」
「決して実体経済とかけ離れていることはないのでは」
等のご意見が聞こえるようです。
もちろん先だってお伝えした
「アメリカ不動産価格バブル化論」
はあくまでも佐藤が市場を観察する中での個人的な意見です。
実は佐藤は間違いで、先でも物件価格の値下げなど起こらないのかもしれませんし、その方が経済にとっても良いのかもしれません。
けれども私自身はどの要素と数字を見ても、やはりベクトルは明らかに「不動産価格は下がる」方向を指しているように思います。
もちろん地域によってはほとんど下げを経験しない地域もあるでしょうし、反対に派手に価格が下がる可能性が高いだろう地域も分かっています。
そこで今日は、なぜ私(佐藤)が
「2020年末から2021年にかけて、アメリカ不動産価格は下がる可能性が高い」
と考えているのかについて、補足を含めてお伝えしておきたいと思います。
供給は更に減る原因があった
価格の上げ下げに影響する力学は、今も昔も
「需要と供給」
です。
何も難しい経済理論を振りかざす必要はなく、需要があるからそこに供給が現れ、
「(需要>供給)= 価値は上がる」
「(需要<供給)= 価値は下がる」
この関係は誰にでも分かることです。
そこで今回はカリフォルニア市場を筆頭に、全米で概ね
「不動産価格が劇的に回復する」
という現象が起きました。
需要と供給の関係でいえば需要が高まって価値が上がったことになりますが、その理由は
需要 = アメリカ不動産金融史でかつてない低金利
供給 = アメリカ不動産市場でかつてない在庫不足
が主だった理由といえます。
もともとコロナウイルスの影響が拡大する以前から、アメリカでは深刻な在庫不足が続いていました。
3年前の記事ですが、こちらの記事は非常に参考になります。
ここに書かれているポイントを意訳すると、
「アメリカでは2030年までに460万戸の新しいアパートが必要」
「さもなくば深刻な住居不足に陥る」
というのです。
実際には、今の時点でもすでに深刻な在庫不足に陥っています。
つまり、将来に向けてもアメリカは慢性的に住居が不足する可能性は否めません。
基本的にアメリカ不動産市場は
「需要が供給を上回る傾向が長期的に続く傾向がある」
というのは事実です。
その為に不動産投資市場としてのアメリカは、末永く賃貸需要が期待できる国であることは間違いありませんし、その意味では冒頭の
「決して不自然ではなく、順調な回復では」
というご意見も決して間違った見方ではないのかもしれません。
けれども、
「(需要>供給)= 価値は上がる」
この関係で需要の方が高く価格が上昇したのは分かりますが、今回爆発的に回復した理由は需要が伸びたのみならず、
「ただでさえ在庫不足なのに、いつも以上に市場に物件が出てこなくなった理由があった」
ことも補足で指摘しておきたいと思います。
低金利で需要が高まったのと反比例して、在庫不足に加えてさらに在庫が出なくなった理由。
それは
「コロナウイルス期に引っ越しなど出来ない」
という先の不安にかられた人々の心理です。
通常、引越しの動機は大まかにいって
1.必要に迫られた引越し
2.積極的に人生を展開する為の引越し
の2種類があります。
前者は仕事上の理由や、あるいは今回のコロナウイルスの影響でダウンサイジングせざるを得なかった場合もあります。
けれども反対に、後者の理由による引越しは今夏は極端に減っています。
「先の経済がどうなるか分からない」
「自分の仕事がどうなるか分からない」
「いざという時の為に現金は残しておかなければ」
誰もが未来に対して斜に構える心理状態にある中で、積極的に自宅を売りに出そうとは思わないものです。
結果として
- 在庫不足
- 引越し意欲の激減
これら2つの要素は今夏の供給量をいよいよ少なくし、低金利による需要の高まりのみを強調する結果となりました。
すでに起こった未来
そしてここに決して忘れてはいけない、見て見ぬふりは出来ない要素があります。
それは
「(需要>供給)= 価値は上がる」
この振り子が
「(需要<供給)= 価値は下がる」
こちらに振れる理由となる、膨大な供給量の増加が考えられる可能性です。
その要因となるものが
「モーゲージローン未払いの増加」
です。
以前もお伝えしたMortgage Forbearance(モーゲージ・フォーベアランス)により、モーゲージローンの支払いが滞っている人々の強制退去は保有の状態になっています。
そして7月の統計によると、
「パンデミック期以前と比較して、180万件が危険な債務不履行状態にある」
とのこと。
ここでいう
「危険な債務不履行状態」
とは、
「モーゲージローンの滞納が90日以上続いている状態」
を指します。
すなわち過去3か月はモーゲージローンを支払っていないことになりますが、ここまでくると過去の滞納分を支払うのは極めて困難になります。
しかもこの180万件というのは極めて危険なレベルのみであり、その危険なレベルに入り得るMortgage Forbearance(モーゲージ・フォーベアランス)適用世帯は更に170万件ほどあるのです。
結果として、たった今は
「Mortgage Forbearance(モーゲージ・フォーベアランス)という法的効力のおかげで底が抜けていない」
だけであり、その魔法が切れた時には多くの物件が市場に出てきて在庫過多になると思われるのです。
結局のところ、これは予想ではなく「すでに起こった未来」と言えるのかもしれません。
そこでアメリカ全体を俯瞰した時に、債務不履行は各地域ではどのような状況になっているのでしょうか。
明日はこの、「すでに起こった未来」を各地域市場ごとに見ていきましょう。
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