昨年以来、米ドルで資産運用を志す方々からのコンサルティング依頼が急増しています。
弊社ではアメリカ不動産コンサルティングに加え、州規制当局に登録されるRegistered Investment Advisor (RIA)としてアメリカ国内での資産運用全般のコンサルティングも提供しており、内容は不動産投資以外となりますが、初心者の方々からのご質問を総括する意図で株や債券に関するまとめ記事を1月7日から期間限定であげさせて頂きます。
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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
本年2021年も残り2ヶ月を切り、ラストスパートに向けて速度をやや早めています。
1年を振り返るのはまだ早いのですが過去10ヶ月間を見るだけでも社会も更に大きく変化、個人としてもかなり大きな変化があった10ヶ月でした。
先だって数日間に渡りお伝えした
「Exponential Growth(指数関数的成長)」
とは経済のみならず、個人の人生にもあてはまるものだと思います。
会社も個人も
経済の流れを読みつつ
市場の流れを読みつつ
然るべき方向に努力をし続ける以外に今の時代を首尾よく切り抜けていく方法はないのかもしれませんし、それをやるやらないでは他の誰との比較てもなく、自分の人生に差がついてしまうように思うのです。
そこで激動する世の中でも特に私(佐藤)自身はアメリカ不動産市場を観察し続けていますが、この2021年は年末から特に懸念されていた事項に
「不動産価格の調整開始」
がありました。
その要因として最も懸念していたのは
Mortgage Forbearance(モーゲージ・フォーベアランス)
による影響です。
パンデミック以降の米国政府の施策として
「理由がパンデミックによるものであれば、モーゲージ支払いは一時停止して良い」
という特例がしかれ、それまで毎月モーゲージローンを支払っていた法人・個人が毎月の支払いを一時的に保留することが出来るようになったのです。
とはいえあくまでも「支払い保留」であり「支払い免除」ではありませんから、支払いを保留した
3ヶ月分
6ヶ月分
12ヶ月分
等の支払い責任は残ります。
そしてこれら累積したモーゲージを支払えるかといえば、特に個人の場合は数カ月分の累積を一度に支払うのは無理です。
Mortgage Forbearance(モーゲージ・フォーベアランス)による支払い保留は
初回申請で半年まで保留可能
追加申請で更にもう半年保留可能
と合計で最高1年間保留が可能ですが、その後は支払いを再開しなくてはなりません。
そこでこのMortgage Forbearance(モーゲージ・フォーベアランス)の有効期限を過ぎた段階から
「支払いは無理」
として融資元が差し押さえ、
「REO(Real Estate Owned:貸し手が差し押さえた物件)の数が一気に増えてくる」
ことが予想されていたのでした。
ところが蓋を開けてみると、今のところ
「Mortgage Forbearance(モーゲージ・フォーベアランス)が失効して住宅供給数が増えてくる」
という懸念はかなり弱くなってきたようです。
すなわちMortgage Forbearance(モーゲージ・フォーベアランス)が失効した際に
「過去の累積を支払えません。物件を手放します。」
とする物件オーナーの数だけ市場に出てくることが予想されていたものが、この2021年末までにかなり「失効後の支払いオプション」が整備され、うまく軟着陸できるように整備されたのです。
Mortgage Forbearance(モーゲージ・フォーベアランス)を申請した人々に、失効後にどのような支払いオプションが用意されているのかを見ていきましょう。
1.まとめ払い
こちらが本来は然るべきですが、失効後はそれまでに累積してきた未払い分を一度にまとめて返済するオプションがあります。
ただしここがポイントですが、このまとめ払いは「貸し手の方から要求することは出来ない」ことが定められました。
そうすると、未払いをまとめて返済する法人・個人は少ないだろうと予想します。
それが出来るなら失効前に返済しているでしょうし、融資元によるまとめ払いの要求が禁じられた時点で市場に一気に物件が出てくる可能性は激減したことになります。
2.累積を少しずつ返済
次のオプションは累積額を少しずつ返済するパターンです。
例えば毎月の返済が$1,000だったとすると、当月の支払いに過去の数カ月分を上乗せし
$2,000
$3,000
とやや多めに返済していくパターンです。
Mortgage Forbearance(モーゲージ・フォーベアランス)の適用中に過去の所得推移を回復、かつ更に余裕のある人々はこのオプションを取るかもしれませんが、適用者全体の半分もいないのではないでしょうか。
3.融資期間の延長
次に「融資期間を延長する」オプションが用意されています。
30年ローンで10年間支払っていたものを
「10年追加して30年ローンに戻す」
という具合にモーゲージ支払いを追加することで融資期間そのものを延長するオプションがあります。
いわゆる「振り出しに戻す」行為に似たようなもので、完全にセカンドチャンスが与えらえるわけです。
4.支払い期日を遅らせる
そして私(佐藤)が選ばれるオプションとして最も多いのではないか、と予想するのが
「支払期日の遅延」
です。
このレベルになると
「ではMortgage Forbearance(モーゲージ・フォーベアランス)とは何だったのか」
という気がしないでもないのですが、要は
「物件を売却した際にまとめて支払うので良い」
とされるオプションです。
アメリカの融資形態の一つにバルーンペイメントと呼ばれる、月々の返済は利息のみで、融資期間の最終月に元金をまとめて返済するオプションがあります。
このバルーンペイメントよりも有利に融資期間の最後にまとめて支払うのでよい、とされるオプションです。
それならば融資期間が残り20年あるのならば残り20年暮らし続け、売却益から返済すればよいことになります。
今回の場合、恐らくこのオプションが最も多く選ばれるのではないでしょうか。
5.ローンの組み換え
そして最後に極めつけと言えるのがローンの組み換えです。
組み換えと入っても、融資業務の常識から考えるとかなり寛大かつ下手をすると禁じ手とも言えるような
- 金利の値下げ
- 毎月の支払いの減額
等のオプションがあります。
これによりモーゲージ保有者は返済はかなり楽になるはずです。
。。。
これらはMortgage Forbearance(モーゲージ・フォーベアランス)以降、金融機関により調整されてきた失効後の救助政策です。
上記をさらっとみるだけでもありとあらゆる策が講じられていることが分かります。
このあたりを躊躇なく取り決めて実行に移す金融業界のスピードも大したものですが、結果としてこれらの政策により
「Mortgage Forbearance(モーゲージ・フォーベアランス)を起因とする価格下落の可能性はかなり減少する」
と言えそうです。
そうすると、この年末から2022年に向けてのアメリカ不動産市場の動きがかなり鮮明に見えてきます。
このまま、2022年のアメリカ不動産市場について予想される点を見ていきましょう。
明日に続けます。
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