昨年以来、米ドルで資産運用を志す方々からのコンサルティング依頼が急増しています。
弊社ではアメリカ不動産コンサルティングに加え、州規制当局に登録されるRegistered Investment Advisor (RIA)としてアメリカ国内での資産運用全般のコンサルティングも提供しており、内容は不動産投資以外となりますが、初心者の方々からのご質問を総括する意図で株や債券に関するまとめ記事を1月7日から期間限定であげさせて頂きます。
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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
「潤沢なキャッシュフローを求めるのであれば、どこかの時点でマルチファミリー物件のステージに上がる必要がある」
そんな下りで、マルチファミリー物件へと進むパターンについてお伝えしています。
マルチファミリー物件に歩を進めるには
Duplex(二世帯)
Triplex(三世帯)
Fourplex(四世帯)
8 戸
12 戸
24 戸
32 戸
。。。
と、あえてこの順番通りでなくても良いのですが
「少数戸から徐々に大きい戸数へ」
の式で自分の不動産投資に対する熟練度と共に規模を大きくしてくことが王道です。
稀に、初めての不動産投資でいきなり50戸以上のマルチファミリー物件を購入して
「相当数の失敗を経験し、疲弊しながらも運用を軌道に乗せる」
というツワモノもいらっしゃいますが、定石としては自分の理解度と経験値に合った物件から開始するのがよいと思います。
また今回参考例としてご紹介しているのは
① ボロボロな物件を購入して自分で全面的にリノベーションする
② ちょっとした修繕レベルで済む物件を購入
③ プロがフルリノベーションを済ませた物件を購入
の中の「③」に相当する物件です。
「キャッシュ・オン・キャッシュリターン」
の観点で言えば、「①」のボロボロな物件を購入して自分でリノベーションを監督する方がリターンは最大化できるに決まっています。
けれどもフルリノベーションというからには
- 屋根の新調
- 温水器の交換
- フロアリング交換
等の大きなコストがかかる部分に加え、細かい部分も含めると
・必要な業者を全て自分でゼロから集める
・それぞれの業者の動きを見積もり段階からすべて自分で監督
・自分で仕上がりを確認
等は、それこそ地元現場に張り付かないと無理です。
その意味では
⇒ 必要な人材を集める
⇒ 作業工程を監督する
⇒ 仕上がりを確認する
等は間違いなく専門分野になりますから
「購入価格と運用実績を分析すると理に適う」
ということであれば、今回のような
「プロが仕上げた物件を購入する」
という選択肢も大いに検討の余地があります。
数字を並べてみる
そこで本物件に関する初年度のプロジェクション数値を並べてみます。
物件価格:$555,000
---- 収入 ---
家賃:$57,120
空室率:(5%) $2,856
収入合計:$54,264
--- 支出 ---
修繕、メンテナンス:$4,800
土地の手入れ:$1,200
管理料:$5,426
固定資産税:$7,197
保険:$2,187
支出合計:$20,810
NON $33,454($54,264 - $ 20,810)
初年度の予想数値を並べましたが、それぞれの項目を簡単に補足説明します。
家賃
この物件は現在、家賃$595で満室です。
売主いわく、この家賃を$625にまで値上げが可能とのこと。
ただしここは私(佐藤)が独自に調べたところ、この近辺ではワンベッドルームは$685が平均相場になっています(2022年1月時点)。
この物件は昨日お見せした写真のように内装を含めてフルリノベーションされていますので、平均家賃以上はあってもおかしくないはずだと思います。
結果として、よほどタイミングを間違えない限りは$625以上に値上げは可能だと思います。
空室率
空室率の考え方は「年間の総戸数」です。
この物件は8戸ですから、年間の総戸数は
96戸(8戸 × 12ヵ月)
となります。
5%ということは、
4.8戸(96戸 × 5%)
であり、
「1年を通して4.8戸が空室になる可能性がある」
言い換えると、
「年間に8戸のうち2戸の住人が入れ替わって、それぞれのターンオーバー(住人入れ替えの期間)に2.4カ月かかる」
あるいは
「年間に8戸のうち4戸の住人が入れ替わって、それぞれのターンオーバー(住人入れ替えの期間)に1.2カ月かかる」
という考え方になります。
この期間に家賃収入はありませんから、家賃収入から差し引いて考えるわけです。
以上が収入部分です。
ここからの支出についてはこの物件独自の項目のみ、抜き出してみます。
土地の手入れ
物件周りの手入れにかかる費用を年間で$1,200を見込んでいますが、ここは主にランドスケープ(景観)のメンテナンス費用です。
電気料金
水道光熱費の中でも電気料金のみが加えられています。
基本的にこのマルチファミリー物件の場合、各戸の水道光熱費はテナント持ちでありオーナーは支払いません。
ただしマルチファミリー物件にはありがちな
「建物外側の街灯電気」
等、オーナー側がテナントやゲストの安全性確保の為にテナントに提供する設備の電気代となります。
このマルチファミリー物件はディールか?
そこでマルチファミリー物件がディールかどうかをざっくりと見る時は、一番最初に
「NOIとキャップレートで計算」
してみるとよいと思います。
5戸以上のマルチファミリー物件は商業物件に分類される為、1戸から4戸までの住居物件との違いとしてその価値は
「どれくらいの収益性があるのか?」
で見立てられることになります。
その公式は
物件価値 = NOI ÷ キャップレート
であり、現状で分かるNOIを当地のキャップレートで割ると算出できます。
そうするとこの例では前述のとおり初年度のNOIは$33,904と見立てられており、かつこの地域市場では6%が適切なキャップレートですから
$565,066($ 33,454 ÷ 6%)
と、家賃が$595の今の時点でも計算してみると安いことが分かります。
かつ、数年かけてテナントを入れ替えて現在の平均家賃相場$685に全てを値上げした場合、
家賃総額:$65,760($685 × 8戸 × 12ヵ月)
空室5%を加味:$62,472($65,760 × 95%)
NOI:$41,662($62,472 - $20,810)
物件価値:$694,366($41,662 ÷ 6%)
と、69万ドルを超えてもおかしくないわけです。
フルリノベーション済である点を踏まえると、70万ドル以上で市場に出してもおかしくないことになります。
もっぱらこの物件については現段階では売主からの情報のみで計算しており、それぞれの数字が本当かの検証はこれからです。
その結果によってはNOIが下がる可能性もありますが、
「プロがフルリノベーションを済ませた物件を購入」
のパターンでは決して過剰な利益の上乗せはなく、フルリノベーション後の物件であることを考えるとディール物件の部類に入ると思います。
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