こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
アメリカ不動産投資についてクライアントの皆様から日々ご質問を頂きますが、特に本年に入ってから多い質問に
「商業ローン系の質問」
があります。
アメリカ不動産に適用されるローンには
- 住居物件用ローン
- 商業物件用ローン
の2種類がありますが、不動産物件に対してどちらのローンが適用されるかは一つの建物に入っている戸数によって違いがり、
1〜4戸 … 住居用物件ローン
5戸以上 … 商業用物件ローン
の区分になります。
すなわち商業物件ローンに関するご質問が多いということは
「5戸以上の’商業物件購入を検討する方々が増えている」
或いは
「1〜4戸の物件を法人名義で購入する方々が増えている」
ということです。
その理由は
「キャッシュフローをより充実させたい」
「減価償却を大きく取りたい」
「老後の備えを万端にしたい」
等様々ですが、アメリカ不動産投資をして資産形成を大きく飛躍させる上ではどこかの時点で5戸以上の商業物件レベルに入ることが推奨されます。
もちろん
「自分は数件の1戸建てまでで十分」
という考え方もあるでしょうし、実際に不動産投資は4戸までの住居物件レベルで十分とする方々も多くいらっしゃいます。
けれども不動産投資を本格的な事業のレベルで、果ては不動産投資の収入で老後を過すことを望むのならば、商業レベルに入ることは義務ではないものの
「避けて通れない道」
と言えます。
ここからの時代、各人が将来の年金は「おまけ」程度に考えなばならないだろう現実が目の前にきているからこそ、個人の不動産投資レベルを商業物件レベルの段階に引き上げる方々が増えているのです。
実際のところ、住居物件ローンについては商業物件ローンほどのレベルで質問を頂くことはありません。
4戸までの住居用ローンの場合は大手銀行のモーゲージ部門を始めモーゲージ会社も数多く存在していますから分かりやすく、一定の英語力があればどなたでも問題なくローン組みが出来るからです。
そしてなぜ商業ローンの場合は質問の割合が多いのかと言えば、
「商業用ローンは住居用ローンに比べて遥かにルールが複雑」
だからです。
例えばいくつか典型的な例を上げると、商業ローンは下記のような特徴があります。
LLC名義は商業用として扱われる

この点は物件を購入する前に把握しておきたいことですが、
「LLC名義で1戸建てを購入したのですが、銀行からLLC名義ではモーゲージが組めないと言われました。」
との問い合わせを頂戴するパターンがあります。
Legal Shield(法の盾)の趣旨でLLC名義で物件を購入してモーゲージを組もうと考えていたものの、いざ物件を現金で購入して後にローンを組もうとしたところ、「LLCではローンは組めません」と告げられるパターンです。
ここには明確な理由があり、LLCの場合はあくまでも個人ではなく法人として扱われてしまいますから、たとえ1戸建てであったとしても名義が法人であれば住居用ではなく商業用ローンで組む必要があるのです。
そこでアメリカ人投資家でも多くの人々が
1.フィクサーアッパーレベルの古い物件を現金購入する
2.フルリノベーションをかけて価値を高める
3.テナントをつける
4.リファイナンスを実施して投資額のほとんどをキャッシュアウトする
という、自己資金をほとんど(或いは全く)減らさない手法での投資を試みていますが、この流れを初めて実行するアメリカ人投資家でも把握していないことが多いのが
「LLC名義では住居物件用のローンが適用されない」
という事実です。
一度LLC等の法人名義で購入してしまうと商業用ローンを組むしかありませんから、まずは個人名義で購入してローンを組み、その後に個人名義からLLC名義に移管するのが得策です(LLC名義に移管が許されるまでは一定の期間があります。その期間はモーゲージ会社にお問い合わせください)。
どこから取り組めばいいのか分からない

そして最初から商業ローンを組むつもりでいた方々の中で最も多いのは
「商業用ローンを組むにあたり、そもそもどこからスタートするべきか分かりません」
という質問です。
住居用物件の場合は大手銀行のモーゲージ部門やモーゲージ会社がいくらでも巷に溢れていますし、先日振れたRocket Mortgageのようにそれこそオンラインで実に簡単にスタート出来るモーゲージも存在します。
けれども商業ローンの場合はその姿が見えにくく、
「商業ローンを扱う会社が見つかりません」
「ネットでちらほらそれっぽい会社が出てきますが、どんな基準で選ぶべきかさっぱり分かりません」
という声をよく聞きます。
そこで商業ローンそのものはどのように進めるべきかと言えば、初心者の方々にとって最も無難なのは
「商業用モーゲージブローカーに依頼すること」
です。
住居用物件ローンの場合はかなりの割合で自分で進められたとしても、商業用物件ローンの場合はそもそもの審査基準が住居用物件ローンとは全く違ってきます。
より正確にいえば、
「レンダーにより審査時の要求が全く違ってくる」
ものであり、十人十色ならぬ十物件十色で審査要求定義にまるで統一感がないのです。
「商業用物件は周囲物件との比較ではなく、その収益性で価値が決まる」
という原理原則はあるものの、審査過程で健全性を証明する際の要求事項がほぼ物件毎に違ってくることになります。
。。。
かくして商業用物件ローンは複雑怪奇であるだけに住居用物件ローンよりも頂戴する質問数が多いことになりますが、商業用ローンに関する質問が増えている流れを受けてその一助となれるよう
「商業物件ローンの種類」
について、簡単にまとめておきたいと思います。
明日に続けます。