昨年以来、米ドルで資産運用を志す方々からのコンサルティング依頼が急増しています。
弊社ではアメリカ不動産コンサルティングに加え、州規制当局に登録されるRegistered Investment Advisor (RIA)としてアメリカ国内での資産運用全般のコンサルティングも提供しており、内容は不動産投資以外となりますが、初心者の方々からのご質問を総括する意図で株や債券に関するまとめ記事を1月7日から期間限定であげさせて頂きます。
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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
物件供給量の増加を意図したゾーニング緩和についてお伝えしています。
昨日までにお伝えしたように
「ゾーニング緩和は物件価格の抑制に必要な措置」
とは誰もが理解する上で、過去においてはゾーニング法が差別ツールに使われた一方で、現代はやはり形を変えて
「自分の裏庭ではゾーニング緩和は勘弁して欲しい」
そんな雰囲気は厳として存在します。
もっぱら現代は人種的な意味合いではなく
「自分の資産価値を守りたい(近所に物件が無造作に増えると自分の資産価値が下がりかねない)」
そんな心理が見えない壁となり、州政府が推進したとしても地方自治体がその実行を避ける雰囲気があるのです。
結論、ゾーニング緩和実行するしないの問題に対しては市長を始めとする自治体の有力者自身がマイノリティでない限り、大きく前進することは望めないのではないでしょか。
この問題が根深いのは、人々の本音がゾーニング法という見た目の法律に隠されてしまうことです。
例えば、それなりに物件価値の高い住宅街のすぐ横に結構な土地があり、ゾーニングが緩和されたら一気にアパート物件が乱立できるとしましょう。
これにより最低でも1,000世帯が入居できる新しいコミュニティが現れるとします。
ところがその計画が出るや否や、今いる生活者たちの中でも特に年配の人々の多くは難色を示すはずです。
その実、人々が一気にその地域に流れてくるとなると、当然自分が所有する物件の希少性も薄れてきます。
けれども「自分の資産価値が下がるから。。」とは決して口にできませんから、
「ここで人が増えると主要道路が相当な渋滞になり、大きな支障が出てくる」
「現在の学区はとても新しい児童数を受け入れる容量はない」
などなど、まことしやかな(実際に筋の通る)理由により、反対運動が起こり得るのです。
けれどもその開発が自分の裏庭でなく、資産価値におよそ影響の及ばない場所であれば反対はしない、ということになります。
ゾーニング緩和はどれくらい価格に影響するのか?
そこで、問題の本質として実際にゾーニング緩和が実施された場合、物件価格にはどれくらいの影響があるものなのでしょうか?
州政府がゾーニング緩和に動く理由は
「ゾーニングを緩和することにより住居用物件の開発が進む。物件数が増えることで需要を十分に吸収し、物件価格も現在の行き過ぎた水準を抑制できるだろう。」
という前提があります。
けれども過去の実績としては、ゾーニング緩和を実行することで手頃な住宅価格に意図したとおりの影響を与えることは確認されているものの、
「多くの大衆に対して手頃な価格で物件を提供するには十分ではない。」
と結論づけられています。
この点に関して、大学院の研究者が数学的モデルを使用してゾーニング規制のない中で住宅開発がどのように進むかを二つの仮想的な都市を比較してみたことがあります。
結果は、
「手頃な価格の住宅の増加はさほど期待できない。」
「特に賃貸料の値上がりに対する効果は極めて限定的。」
というものでした。
同研究チームの財務学准教授によると
「もしボストン市が住宅を建設しやすいインディアナポリスの規制を採用した場合、我々のモデルによれば、賃貸料を12%しか下げない。」
「これは過去30年間でボストンの賃貸料上昇率よりもはるかに低い。」
と結論付けています。
とどのつまり、現実世界での証拠としてはゾーニング条例を撤廃を実行した都市の例からも、土地利用改革が住宅の手頃な価格に与える影響は極めて限定的になる、ということです。
また別機関の研究によると、アメリカの8つの都市圏で1,136の都市のデータを機械学習で収集してゾーニング制限を緩和してみると、
「3年から9年後に住宅供給が0.8%増加する」
との予想が出されました。
9年もの時間をかけて、住宅供給増加は1%にも満たないとの試算です。
しかも詳細を見ると、実際の供給増加は
「大部分が高価な賃貸住宅の供給増加になる」
とのこと。
低所得の世帯にとって手頃な価格の住宅が大幅に増加する見立てにはならず、この仮説が正しいとすれば、いよいよゾーニング緩和が物件価格抑制の起爆剤になるとは言い難いのです。
。。。
数日に渡り、ゾーニング緩和の観点からアメリカ不動産市場が抱える在庫不足の問題に焦点を充ててみました。
かくしてゾーニング緩和は供給増加の決定打になるとは言い難く、格差社会の根深い根本的な問題が改めて浮き彫りにされてきます。
アメリカという国における現状の金融資本主義がどのように変化変容していくのかは分かりませんが、少なくとも今のままでは
「アメリカ不動産市場の物件価格は、原則上昇し続ける」
という力学は変わりそうにもありません。
もちろんこれは原則の話であり、時折、プチ暴落にも近い減少も含めて価格の上げ下げは続いていくと思います。
けれども「アメリカ不動産高ドル安」が基本となる今の社会構造では、そのベクトルは上を向く傾向が強いのです。
自分の資産をアメリカ不動産に転換して保全する意味では嬉しい傾向ではあるものの、それと同時に金融資本主義の成れの果てがどのように進むのか、注目し続ける必要がありそうです。
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