こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
昨日はFinancial Documents(フィナンシャル ドキュメント)の関係者についてお伝えしました。
モーゲージ(Mortgage)
トラストディード(Trust deed)
についてはそれぞれ
モーゲージ(Mortgage)… モーゲージャー (Mortgagor)、モーゲージィ (Mortgagee)
トラストディード(Trust deed)… 信託者 (Trustor)、受益者 (Beneficiary)、信託業者 (Trustee)
という登場人物がいます。
そしていざ債務不履行が発生した場合、その後の手続きは前者のモーゲージ(Mortgage)は貸し手と借り手の二者しかいない為に裁判所にもちこまれ、後者のトラストディード(Trust deed)の場合は最初から第三者となる信託業者 (Trustee)が証人的な役割を果たすため、裁判所手続きの過程を経ずに売却が可能となるのです。
そこで今日は引き続き、実際に債務不履行が発生した場合のそれぞれの手続きについて、ポイントを押さえておきましょう。
モーゲージ(Mortgage)でDefault(デフォルト)が発生した場合
モーゲージ(Mortgage)のDefault(デフォルト、債務不履行)は通常、裁判所の差し押さえ手続き(司法的差し押さえ)を必要とします。
関係者が貸し手と借り手の二者しかいないモーゲージ(Mortgage)の場合、法的効力をもって支持する裁判所が間に入って手続きを行う必要があるのです。
このことを
Judicial Foreclosure(ジュディシャル フォークロージャー、司法的差し押さえ)
といいます。
そしてこの手続き後に物件が売却されると、抵当権者(借り手)は物件を買い戻す権利が与えられます。
この買い戻す権利のことを
Right of Redemption(ライト オブ リデンプション)
といいます。
このRight of Redemption(ライト オブ リデンプション)は「償還の権利」として知られており、物件が売却されてから1年間この権利を行使することができます。
例えば、もしモーゲージ支払いを怠り、裁判所による差し押さえの対象となったとします。
この差し押さえの後、裁判所手続きを経て物件は公開市場で売却されることになります。
けれども売却日から1年の間、
「不履行に絡む全額を支払う」
という条件で、物件を再び取り戻すことができるのです。
ちなみにこの1年の間、家主は物件を所有し続けて家を離れる必要はありません。
この償還の権利が期限切れになるまで、家主はその物件の中に住み続けることが許されます。
このことを反対に差し押さえ物件を購入した立場からすると、
「公開市場で購入したものの、1年間は物件を占有できない」
「家主が借金を全額返済したら、結局は自分のものにはならない」
ということになります。
かくして、モーゲージ(Mortgage)の債務不履行においては差し押さえから新しい家主が占有するまでに、結構な時間を要することになるのです。
売却までの期間
ちなみに時間軸としては前後しますが、モーゲージ(Mortgage)でDefault(デフォルト)が発生した場合は売却に至るまでもかなりの期間を要します。
その流れを端的にみていきましょう。
1.債務不履行通知 (Notice of Default)
ボロワーがモーゲージの支払いに遅れると貸主は通常、30日から60日後に債務不履行の通知を送付します。
この通知には遅延している金額やその他の関連費用及び期限内に支払う必要がある金額が記載されており、この内容に従って家主であるボロワーは支払いを行う必要があります。
2.裁判所手続き
この債務不履行通知後にボロワーがそれでも支払いを怠る場合、貸主は裁判所に差し押さえの申請をすることができます。
ただしこの司法的差し押さえの手続きは数ヶ月から1年以上かかる場合があり、この間にボロワーは住居に暮らしたままです。
この期間は特定の州の法律や裁判所の予定、またボロワーが法的な措置を取るかどうかによって期間は変動しますが、売却にこぎつけるにも結構な期間がかかることが分かります。
3.売却
こうしてようやく裁判所の差し押さえ手続きが完了すると、物件は公開オークションまたは裁判所のセールで売却されます。
この売却の日は裁判所の命令に従って決定され、通常は差し押さえの承認を受けてから数週間から数ヶ月の間に設定されます。
。。。
結果としてモーゲージ(Mortgage)の場合は
債務不履行通知 ~ 売却 ~ ボロワーの退去
の期間は二年近くに及ぶこともあり、相当気長な作業となることが分かります。
言い換えると融資を行うモーゲージ(Mortgage)会社は一度債務不履行が発生して差し押さえとなる場合、資金を回収できない期間が二年近くに及ぶこともあるのです。
これがいわゆるモーゲージ(Mortgage)会社にとってのリスクであり、このリスクを極小化するべく、融資審査にはそれなりに厳しい基準を設けているのです。