こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
不動産購入はその購入者が法人であれ個人であれ、間違いなく「高額の買い物」です。
個人にしても物件の購入以上に高い買い物はおいそれとはないわけで、しかも
1000ドル
10000ドル
どころか、普通に10万ドル単位の買い物になるわけですから、購入者は一つひとつのステップを慎重に進めることになります。
そして中古物件を購入する際に買主が最も気を付けるべきは建物そのものの瑕疵です。
住居機能に不具合の物件を購入してしまうと、当然ながらそこには多額の修繕費用が発生してきます。
だからこそ不動産売買の契約過程においては専門家を雇い、物件調査を実施することは必至です。
物件調査を通して然るべき不具合が発見された場合、買主はその物件調査報告書を証拠として売主と交渉が可能になります。
けれども、物件の不具合については物件調査はおろか、契約に入る以前に売主が買主に果たすべき責任があります。
それが昨日からお伝えしている
「物件状態に関する売主の開示責任」
です。
歴史を紐解くと、昔のアメリカでは不動産売買は常に買主が不利でした。
多くの場合、売主は自分が売却する物件に長年暮らしているわけですから、物件のどこがどんな状態になっているかは熟知しています。
これに対し、買主は立地と外観だけをみて
「この物件は良さそうだ」
と判断は出来るものの、実際に物件に不具合があるかどうかは暮らしてみないと分からないものです。
当時はこのあたりの法律が整備されていなかった為、売主は
「この不具合がバレると、買主はオファーしてくれないかもしれない」
という心理が働いて、物件の不具合を隠ぺいすることが日常茶飯事でした。
その後に売主と買主の立場を可能な限り平等にするべく法律が整備され、州ごとに多少の温度差があるものの、概ね売主には買主に対して物件の状態を正直に開示することが義務付けられているのです。
売主による開示義務について、もう少し深堀してみましょう。
売主の責務
物件を売却する際、売主には多くの判断が求められることになります。
特に物件の状態に関する情報開示は、売買契約の成功とトラブル回避の鍵を握る重要なポイントです。
では、物件のどのような情報を開示すべきでしょうか?
一般的にいえば、買主に開示されるべきは
- 物件の物理的な状態
- 危険物質や状況の存在
- 価値に影響を及ぼす訴訟や未解決の問題
等、購入者の決定に影響を及ぼす可能性のある要因は開示義務があります。
とはいえ、物件のどんな小さな問題も開示する必要があるのでしょうか?
例えば
雨の日に少し水漏れする窓
時折わずかに浸水する地下室
のような、日常生活で比較的小さな不便は本当に開示する必要があるのでしょうか。
実は、このような細かい問題の開示は売主にとっても購入者にとっても大切なことです。
多くの場合、売主は
「できるだけ少なく情報を開示することが最善だ」
と考えがちですが、ここには落とし穴があります。
確かに初見では些細な問題かもしれませんが、後にそれが大きなトラブルに発展することもあり得るからです。
特に過去に修理が施された個所においては、購入者が後で修理が不十分であることを発見した場合は追加の修理費用を負担することになりかねません。
そこで売主としての大切な心得は
「正直に全てを開示すること」
です。
正直に問題を開示することが、なぜ売主にとっても有利なのでしょうか?
まず、正直な情報開示は信頼関係の構築に役立ちます。
購入者は売主が正直に情報を提供していると感じると、安心して取引を進めることができます。
また予期せぬ問題が発生した場合、開示した事実に基づいて売主は訴訟リスクを回避できる可能性が高くなります。
「売主に悪意はなかった」
という事実は何よりも強いものです。
開示するべき具体的な例としては
- 建物の構造的な問題
- 雨漏りや配管の問題
- 過去に発生した自然災害による被害
- 土壌汚染やアスベストなどの有害物質の存在
などがあります。
これらは購入者が重要視するべき項目であり、仮に隠されていた場合、後に大きな問題に発展する可能もあるのです。
また情報を開示する際には修理や改修の履歴を見せることも重要です。
過去に修理された箇所がある場合、それが
- どのように
- いつ
- 誰によって修理されたのか
を明記することで、購入者は物件の状態をより正確に理解することができます。
さらに不動産市場のトレンドや法律の変更も売主には重要な情報です。
例えば最近では環境に優しい家づくりが注目されているため、エネルギー効率の良い改修を行った場合、それをアピールポイントとして前面に出すことが有効にもなります。
このような情報開示は売主にとっては面倒に感じる作業かもしれませんが、長期的に見れば、トラブルを未然に防ぎ、よりスムーズな取引を行うための重要なステップです。
かくして売主は自身の物件についての全ての情報を正直に開示することで、信頼される売主としての評判を築き、売却において良い取引を行う土台を作ることができるわけです。
売主による情報開示について、明日に続けます。
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