こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
当ブログはアメリカ不動産に特化した項を毎日更新で上げていますが、今回は間接的に大切な情報として、企業透明性法(CTA)とその対応について触れておきたいと思います。
対象となるのは法人ですが、米国にてLLC形態で物件を保有されている方は対象になると思いますので、本項をご一読ください。
【免責】
本項に書く内容はあくまでも弁護士資格を有しない佐藤個人の知識です。より詳細については会社法を専門とする弁護士にお問い合わせください。
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企業透明性法(CTA: Corporate Transparency Act)は2021年1月1日に国防権限法の一部として制定され、銀行秘密法と関連する反マネーロンダリング規則の最も重要な改革とされています。
CTAの目的は一定の実体(主に中小企業)に対し、「実質的所有者」の情報を金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)に報告することを義務付けることで
- マネーロンダリング
- テロ資金調達
- その他の違法な資金調達
に対処し、防止することです。
CTAでは米国財務省の局であるFinCENがこの情報を収集・保護し、特定の状況で政府機関や金融機関に開示することを認めています。
詳細を見ていきましょう。
CTAの新しい報告要件の対象となるのは誰?
CTAに準拠する必要がある実体(「報告会社」)には、州務長官(SOS)または同等の公式機関に書類を提出することで設立された法人、有限責任会社(LLC)、その他の種類の会社が含まれます。
CTAはSOSまたは同等の公式機関に登録して米国で事業を行う非米国会社にも適用されているようです。
CTAの下での国内実体の定義は非常に広範なため、個々の州法の設立実践に基づいて追加の実体タイプがCTAの報告要件の対象となる可能性があるかもしれません。
ちなみにCTAの下で報告が必要な例外は多数あり、例外の多くは既に連邦または州政府によって規制されている法人であり、そのような法人は既に政府機関に実質的所有者情報を開示している為に例外とされています。
もう一つ注目すべき例外は「大規模な運営会社」で、以下のすべての要件を満たす会社は例外と定義されています。
- 米国で少なくとも20人のフルタイム従業員を雇用する
- 前年の税申告での総収入(または売上)が500万ドルを超える
- 米国内に物理的なオフィスの運営拠点を持つ
報告義務がある会社「実質的所有者」とは誰のこと?
上記の例外に該当する法人以外はCTA登録が必要となりますが、その対象者は法人の「実質的所有者」とされています。
実質的所有者とは、直接または間接的に「大きな支配力」を行使する、または会社の所有権益の少なくとも25%を所有または支配する個人のことです。
個人が「大きな支配力」を行使する場合、その個人が
(i)会社の上級役員として勤務している
(ii)上級役員の任命または解任、または取締役の過半数に対する権限を有している、
(iii)報告会社によって行われる重要な決定に大きな影響力を持つ
場合に該当します。
ということは、株式を保有していない場合でも、会社を支配する上級役員やその他の個人はCTAの下で実質的所有者というわけです。
報告要件の段階的導入
現在発表されているところでは、CTAの報告要件は2段階で導入されています。
第一段階:すべての新しい報告会社(2024年1月1日以降に設立された、または非米国会社の場合は登録された)は、設立または登録後90[1]日以内に必要な情報を報告する必要がある。
第二段階2024年1月1日以前に設立または登録されたすべての既存の報告会社は、2025年1月1日までに必要な情報を報告する必要がある。
CTAへの準備方法
CTAは新しく広範な報告体制を導入しているため、自分の法人への影響を鑑みておく必要があります。
すべてを網羅するわけではありませんが、ここではQ&A形式で見ていきましょう。
自分の法人はCTAの対象となるのか、または例外に該当するのか?
法人が例外に該当しない場合、所有権益の割合をどのように計算して、所有者の中で25%の所有基準を満たす人がいるかどうかを判断すべきでしょうか。
単純な資本構造を持つ会社では答えが明らかですが、複雑な資本構造を持つ会社、または所有権益の一部が間接的に保有されている会社(例えば、上位の投資実体、持株会社、信託を通じて設立されている)では、それほど明確ではない場合があります。
会社に「大きな支配力」を行使する各人をどのように評価し、特定するのでしょうか。
「大きな支配力」の定義の広範性(および曖昧さ)を考えると、該当する人が複数いる可能性があると思われます。
どんな情報を提供する?
提供する必要がある情報の種類には、
- 所有者の法的な名前
- 居住地
- 生年月日
- 有効期限の切れていないパスポート
運転免許証または州の身分証明書からのユニークな識別番号(ユニークな識別文書の画像を含む)
が含まれるようです。
注意点として、報告者は実質的所有者が自分の情報の報告可能な変更(例:所有権の変更、引っ越し、結婚、離婚など)をタイムリーに更新することに頼る必要があります。
その結果、会社の運用文書はCTAに関連する条項(例:表明、契約、補償、同意条項など)を含むように修正する必要があるかもしれないとのこと。
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今回施行されたCTA報告義務は不動産をLLC名義で所有する投資家にとっても大いに関係があると同時に、うっかりしてしまいそうな報告義務です。
なかなか面倒ですが、CTAを遵守するために必要な手順を明確にするべく、この分野の専門家である法律顧問にできるだけ早く連絡した方が良いかもしれません。
というのも、CTAの報告要件に故意に違反した場合の罰則には
(1)違反が是正されない日ごとに最大500ドルの民事罰(!)
(2)最大1万ドルの刑事罰金および/または
(3)最大2年の懲役
が含まれます。。
CTAの下での実質的所有者報告要件に関する追加情報については、FinCENのよくある質問の文書をhttps://www.fincen.gov/boi-faqsでも参照できます。
なかなかやっかいですが、
「マネーロンダリング、テロ資金調達、その他の違法な資金調達を防止する」
という大義名分では、米国で会社を経営する者として協力する義務があることになります。
LLCを所有される方は、忘れずに対応しましょう。