こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
アメリカ不動産投資用にLLCを設立する場合の利点についてお伝えしています。
私(佐藤)もアメリカ国内の各州に複数のLLC(Limited Liability Company:有限会社)を所有していますが、LLCという法人制度は便利だなとつくづく思います。
たった今も2023年度の不動産事業結果をもって法人と個人のタックスファイリング(確定申告)を進めているのですが、改めてLLCの便利さを痛感する次第。
米国の税制や確定申告に明るい方は
「え、2023年度の個人の確定申告は期限が過ぎているのでは?」
と気づかれるかもしれませんが、実際に本年もまた例年通り、わざと申告期限を延長させています。
このあたりは公認会計士と打ち合わせながら戦略的に進めていますが、LLCと掛け合わせることで確定申告の時期をずらしつつ、より効率的な資産構築が可能となるものです。
俗にLLCを設立する利点として「法的に自分を守る強度が上がる」と言われ、これはその通りですが、それ以上に資産形成におけるファイナンシャル戦術としての利点の方が大きいように思います。
LLCを設立する利点について、本日も続けます。
信用力の向上
LLC(Limited Liability Company)を設立することによる「信用力の向上」は、特に不動産投資において重要な利点の一つです。
個人として不動産投資を行う場合と比較して、LLCを通じて事業を運営することで、金融機関や投資家からの信頼をより容易に獲得できます(それなりの期間、利益を上げ続けていることが条件です)。
たとえば、カリフォルニア州で中規模の不動産投資プロジェクトを手掛けるLLCの場合、個人ではなく法人として運営されていることから、大手銀行やプライベートレンダーからの融資を比較的容易に受けられるはずです。
LLCは、個人の信用よりも企業の信用に依存することが多いため、信用記録が限られている個人よりも融資のチャンスが高まる傾向があります。
また、法人としての地位は投資家やビジネスパートナーに対してよりプロフェッショナルかつ安定したイメージを与え、その結果、資金調達や新しいビジネス機会の創出にも繋がり得るのです。
ちなみに法人名に「, LLC」とLLCを最後に付ける必要がある場合がほとんどですが、ビジネスの実際の運営名を異にさせたいときには「DBA」(Doing Business As、屋号)という選択肢があります。
DBAは事業を行う際に使う別名、つまり商業名や商号です。
法的にはLLCの名前が正式ですが、日常の商取引ではDBAの名前を使用することができ、特にブランディングやマーケティングの目的で役立ちます。
たとえば、法人名が「Green Horizon, LLC」である不動産投資会社があるとします。
この会社は一般の顧客や他のビジネスに対して「Green Horizon」として知られていたいと考えていますが、法的文書や公的な契約では「Green Horizon, LLC」という名前を使用する必要があります。
そこで、この会社は「Green Horizon, LLC」の名前の下で「DBA Green Horizon」として事業登録を行うことで、法的には「Green Horizon, LLC」として認識されつつ、市場や顧客との日常のやり取りでは単に「Green Horizon」として運営を行うことができるのです。
このようにDBAを用いることで、ビジネスがより親しみやすく市場に認知される名前で活動できる一方で、法的な保護や公式のビジネス名の利点も保持することが可能になります。
またまた、DBAは複数設定することもできるため、一つのLLCで複数の異なるブランドや事業を運営する際にも便利です。
所有権の柔軟性
LLC(Limited Liability Company)の所有権の柔軟性は、特に多様な投資戦略を持つ場合に大きな利点ですが、LLCではメンバー(所有者)間の利益分配や管理権限を自由に定めることができます。
例えば、「Blue Ocean Real Estate, LLC」という不動産開発会社があるとします。
このLLCには3人のメンバーがおり、それぞれが異なる専門性やリソースを提供しています。
一人は不動産市場の専門知識を持ち、もう一人は建設とプロジェクト管理の経験が豊富で、最後の一人は資金調達に強いチーム。
LLCの構造では、これらのメンバーはそれぞれの投入資本や貢献に基づいて利益を分配することができます。
たとえば資金調達に特に貢献したメンバーは、高い利益分配率を持ち、他のメンバーはプロジェクト管理や専門知識に基づいて異なる比率を受け取ることもできます。
さらに、LLCの契約ではどのメンバーが日々の決定を下すか、重要なビジネス決定にどのように取り組むかなど、運営の側面についても合意できます。
例えば、'Blue Ocean'では、建設に関する決定は建設とプロジェクト管理の経験を持つメンバーに委ねられ、財務関連の大きな決定は全メンバーの合意を必要とすることができます。
このようにLLCでは、メンバーの個々の強みと事業の要件に合わせて、所有権の構造と運営方法を柔軟に設計することができます。
またLLCの所有権の柔軟性は、家族事業や財産の相続計画において特に有益となります。
例えば、不動産を所有している「Maple Estates, LLC」という家族経営の会社を考えてみましょう。
このLLCは、親が設立し、将来的に子どもたちに事業を引き継ぐことを意図しています。
LLCの構造では、親はメンバー間合意書(Operating Agreement)をカスタマイズして、所有権の移転方法やタイミングを明確に規定できます。
例えば、親は最初は自分が全ての管理権と利益分配権を保持し、子どもたちがビジネスに関与し始めるにつれて、徐々に所有権と管理責任を移譲することができます。
これにより、子どもたちは時間をかけてビジネスの運営を学びながら、徐々により大きな役割を担っていくことが可能です。
さらに、親が亡くなった場合に備えて、LLCの合意書には、所有権がどのように子どもたちに分配されるかを定めることができます。
例えば親の死後に子どもたちが等しく利益分配を受け取るように設定することも可能です。
これにより相続がスムーズに進み、遺産分割に関する複雑な問題や争いを避けることができるわけです。
かくしてLLCは、家族ビジネスの運営や相続計画において、個々の家族のニーズに合わせて所有権と管理権を柔軟に設計することを可能にし、ビジネスの持続性と家族の財産の保護を図ることができる有効な手段としても使えるのです。
明日に続けます。