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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
2025年10月、カリフォルニア州がついに「Home Equity Theft(住宅資本の略奪)」と呼ばれる不公平な制度に終止符を打ちました。
これは税金滞納による差し押さえの際に、政府が本来の債務額を超えて財産を奪うことを禁じる重要な改革です。
そもそも、なぜこの問題が今まで放置されてきたのでしょうか。
もともとアメリカでは固定資産税を滞納した場合、地方自治体がその物件に「税金の抵当権(lien)」を設定し、一定期間が過ぎても支払われない場合には競売にかけることができます。
けれども長年にわたり、一部の自治体はこの競売で得た売却益のうち、税金を差し引いた残りを所有者に返還せず、すべてを「自治体の収益」としていたのです。
つまり数千ドルの未納税金のために、数十万ドルの家を失い、しかも一円も戻ってこない。
そんな理不尽が現実に存在していたのです。
そしてこの行為が違憲であると最高裁が判断したのが、2023年の「Tyler v. Hennepin County」事件です。
ミネソタ州で94歳の女性が2,300ドルの税金を滞納した結果、州が彼女の家を競売で売却し、約4万ドルもの超過利益を全額没収したことがきっかけでした。
最高裁はこの行為を明確に違憲とし、「政府は自らに正当に属する以上の財産を奪うことはできない」と判示しました。
この判決を受けてほとんどの州では速やかに法改正が行われ、競売後に残った資産は元の所有者に返還されるようになりました。
けれども、カリフォルニア州だけは長く「抜け道」を残していたのです。
それが、競売を経ずに滞納物件を他の行政機関や非営利団体に直接譲渡できるという制度でした。
この場合は売却そのものが発生しないため、「残余金」という概念が存在せず、結果的に所有者は全ての資本を失ってしまう。
公的目的のために設けられた制度でしたが、実際には多くの家庭を路頭に迷わせる結果となっていました。
この不公平を是正するために動いたのが、Pacific Legal Foundation(太平洋法律財団)という公益法団体です。
同団体は「Home Equity Theft」を全米で禁止するために10年以上活動しており、その最後のターゲットがカリフォルニアでした。
そして2025年10月、ガビン・ニューサム州知事が「AB 418」法案に署名。
ついにカリフォルニアの「最後の抜け道」が塞がれたのです。
AB 418の内容は明快です。
地方自治体が住宅を差し押さえる場合、必ず市場での売却手続きを行い、その売却益から税金や費用を差し引いた残りを元の所有者に返還しなければならない。
また、競売を経ずに非営利団体などへ譲渡することも禁止されました。
つまり「政府は正当に徴収すべき額だけを受け取り、それ以上は所有者に返す」という、憲法に基づく基本原則がようやく州法に明文化されたわけです。
2024年時点で、カリフォルニア州の住宅ローン所有者のうち約3.3%が固定資産税の滞納状態にあったと報告されています。
人口4,000万人、持ち家率55%という規模を考えると、これは数十万世帯に影響する数字です。
そう考えると今回の法改正は決して少数派の問題ではなく、多くの家庭にとって「財産権の安全保障」となる歴史的な出来事と言えます。
もちろん、AB 418によって税金の支払い義務が免除されるわけではありません。
税を滞納すれば、依然として物件を失う可能性はあります。
けれどもその過程で家の価値全てを奪われることは、もはやありません。
借金を返すためにすべてを失うのではなく、差し押さえ後も残余資産があれば、それを取り戻せる。
最高裁のジョン・ロバーツ長官はこの問題をこう表現しています。
“A taxpayer must render unto Caesar what is Caesar’s, but no more.”
「納税者はカエサルのものをカエサルに返すべきだが、それ以上を奪われてはならない。」
かくして、この動きはアメリカ全土の財産権保護に新たな基準を打ち立てるものとなったようです。
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