こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
アメリカでの不動産事業用にLLC(Limited Liability Company:有限会社)を設立するパターンをお伝えしています。
私(佐藤)はよく法人・個人の投資家様をエクイティ投資にご案内することがあります。
この場合のエクイティ投資とは、
「大型案件に対し、その頭金の一部に出資して比率に応じた所有権を有する」
投資です。
このパターンで出資者間でよく使われるのもLLCの法人体系です。
よくというよりもほぼ確実に、という方が正しいと思いますが、この手の大型案件にもなると
「一つの案件に対して一つのLLC」
を設立するものです。
また出資する側も慎重な投資家の場合、あえて出資者を自分自身ではなくLLCからとするべく、わざわざ投資用にLLCを一つ設置する場合もあるものです。
そこでプロフェッショナルな運営をなされるほど活用されるLLCですが、もちろんLLC設立とその所有にはマイナス面もあります。
プラス面を享受する上で、その引き換えともいえる負の側面も確かにあるのです。
ここから、LLCを設立する場合の欠点について見ていきましょう。
設立および維持費用
まずLLC(Limited Liability Company)の設立と維持には、特定の費用が伴います。
当然ながら法人を設立する上では無料というわけにはいきません。
ただし、これらのコストは事業の法的保護と構造の利点を考慮すると、その支出そのものも合理的な投資です。
例えば、ニューヨーク州で「CityScape Development, LLC」という不動産開発会社を設立する場合、まず州に支払う一定の設立手数料が発生します。
この手数料は、事業を法人として登記し、公式に運営を開始するために必要です。
設立後、今度はLLCは年間の維持費用に直面します。
これには、年次報告の提出料や、一部の州では発生するフランチャイズ税などが含まれます。
「CityScape Development, LLC」では毎年州に報告書を提出し、必要に応じて更新料を支払う必要があります。
これは、会社の活動状況や変更点(例えば、アドレスの変更やメンバー構成の変更など)を州に通知するためのものです。
加えて、特定の州では、LLCに収入に基づく税金を課すことがあります。
この税は、会社の収益レベルや活動内容によって異なり、定期的な財務計画と予算編成を必要とします。
「CityScape Development」の場合、これらの税金は会社の年間収益に応じて計算され、州税務局への申告と支払いが必要になる場合があります。
これらのコストは、LLCとして事業を運営する際に考慮せねばならない欠点です。
けれども繰り返しとなりますが、これらの費用はLLCが提供する法的保護、税務の柔軟性、および運営の自由度を考慮すれば、多くの事業主にとっては投資価値があるものとされています。
特に不動産会社の場合、これらのコストは高価値のプロジェクトを保護し、より効率的な運営を可能にするため、事業の規模を考えると合理的な投資と言えるものです。
税金の複雑性
次にあげる欠点として、LLC(Limited Liability Company)の税務は、しばしばその柔軟性から生じる複雑さを伴います。
これは、個人事業主やパートナーシップに比べて、特に留意すべき点です。
例えば、デジタルマーケティングサービスを提供する「Innovative Solutions, LLC」という会社を考えてみましょう。
このLLCは単一メンバーで構成されており、選択により通過課税(pass-through taxation)の恩恵を受けています。
この場合、会社の利益や損失が直接メンバーの個人税申告に反映されることを意味します。
同時に通過課税の選択には、税金の計算がより複雑になる可能性があります。
例えば、「Innovative Solutions, LLC」の場合、会社の収益は個人の税金に影響を与え、さらに自己雇用税(Self-Employment Tax)の支払いも必要になります。
またLLCが複数のメンバーから成る場合、各メンバーの収益分配や損失の割合が異なる可能性があり、それぞれの税申告がさらに複雑になることもあります。
さらに、LLCが異なる州に事業を展開している場合、各州の税法に準拠する必要があり、これが税務処理をさらに複雑にします。
たとえば、「Innovative Solutions, LLC」がカリフォルニア州とニューヨーク州で事業を行っている場合、両州の税法を理解し、適切に申告する必要があるのです。
このような場合、税務専門家の助言が不可欠になります。
かくしてこれらの要因を考慮すると、LLCの税務は個人事業主やパートナーシップと比較して複雑になるものです。
ただしその複雑さは、LLCが提供する柔軟性と法的保護の利点を考慮すれば、多くの事業主にとっては取り組む価値のある課題でもあります。
また税金の処理が複雑になることは事実ですが、だからこそ公認会計士をはじめとする専門家がいるわけで、彼ら/彼女ら専門家の力を借りることで、税金の複雑性はなんら問題にならないものです。
私自身は必須のパートナーとして
- Bookkeeper(帳簿専門家)
- CPA(公認会計士)
は必ず雇っており、彼らの助言を頂きながら、複雑性を極小化しています。