こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
アメリカ不動産投資に際し、LLC(Limited Liability Company:有限会社)を設立する場合の欠点についてお伝えしています。
LLCの成立に関してご相談を頂くことが度々ありますが、
「LLC設立は必須か?」
と問われると、必ずしも必須ではありません。
LLCに関して大なり小なり知識がある方々がまず最初に思い浮かべる利点として
「LLCは法的な盾になり、訴訟が自分に及ぶことはない(及ぶ可能性が低い)」
というものがあります。
これは事実であり、100%とはいえずとも、かなりの確率で訴訟に対しLLCが防御壁になってくれることは事実です。
けれどもいざトラブルが発生して、損害賠償で金銭的な支払いが必要となった場合、そんな時の為に保険があるのです。
この為、通常は投資用物件を購入される方々には損害賠償責任保険(Liability)として最低でも「$1million」はかけるようにお薦めしています。
これだけの金額があれば大抵の損害賠償には対応できますし、LLCを設立していても相手に巧みな弁護士がついているとして、その法的な壁を突破されることがあるとすれば、結局は保険を使うしかないのです。
とはいえ、少なくとも専門的にアメリカ不動産を事業として展開していくのであれば、やはりLLCは設立した方がよいと思うのが私(佐藤)の考えです。
LLC設立についてその良し悪しを双方の観点から検証するうえで、LLC設立の欠点について続きを見ていきましょう。
譲渡性の制限
LLC(Limited Liability Company:有限会社)の所有権の譲渡性(簡単に言えば売却)にはそれなりのハードルがあり、その難しさは運営構造に起因しています。
これは株式会社と比較した場合、特に顕著な特徴と言えます。
例えば、「Tech Innovations, LLC」というテクノロジー分野のスタートアップ企業を考えてみましょう。
このLLCには、数人のメンバーが所有権を持っていて、各メンバーの所有権比率は会社のメンバー間合意書によって定められています。
株式会社の場合、株主は自分の株式を比較的自由に売買できますが、LLCではこのプロセスがより複雑です。
具体的には、例えばあるメンバーが「Tech Innovations, LLC」の所有権を第三者に売却したいと考えた場合、他のメンバーの承認が必要になることが一般的です。
これはLLCがより緊密なビジネス関係に基づいて構築されているからで、新しいメンバーの導入が既存メンバーの関係や運営に影響を与える可能性があるためです。
さらに、「Tech Innovations, LLC」のメンバー間合意書には、所有権の譲渡に関する特定の条項や制限が設けられている可能性があります。
たとえば譲渡に際しては先に他のメンバーに買取権を提供する「先買権」が設定されているかもしれません。
このような規定はLLC内のバランスを保ち、外部からの不測の影響を最小限に抑えるために設けられているのです。
かくしてLLCでは、所有権の譲渡が株式会社と比べて制限されていることがあります。
この制限そのものはメンバー間の合意と関係性を維持し会社の安定性と方向性を保護するための措置ですが、言い換えると、LLCの形態では所有権の転移が不可能であるわけではないものの、より慎重に考慮し合意に基づいて行われる必要があるということになります。
外国人に対する制限
ここでいう外国人とは米国から見た外国人のことで、日本人も含まれる意です。
アメリカにおけるLLC(Limited Liability Company:有限会社)の設立に関して、外国人に対する制限は州によって異なり、この制限がアメリカ国外からLLCを設立したい方々にとって、そのビジネス展開において考慮するべき事項となります。
例えばある(米国から見た)外国人起業家がアメリカで「Global Tech Ventures, LLC」という技術系スタートアップを立ち上げようとする場合を考えてみましょう。
彼または彼女はアメリカ国籍を持たない者として、LLC設立にあたり、選択した州の法律や規制に特に注意を払う必要があります。
多くの州では外国人がLLCを設立し、所有することに対して特に制限は設けていません。
これにより、外国人起業家はアメリカ国内でビジネスを展開するための法的枠組みを利用できます。
とはいえ、一部の州では外国人の事業活動に特定の制限を課していることがあり、これが事業計画に影響を及ぼす可能性がありますので注意が必要です。
例えば、「Global Tech Ventures, LLC」が特定の州に拠点を置く場合、その州が外国人所有のビジネスに対して追加的な要件や制限を設けている可能性があります。
これには、追加の登記手続き、特定の業種への参入制限、あるいは地元の住民とのパートナーシップの要求などが含まれることもあるのです。
このような制限から、外国人起業家がアメリカでのビジネス設立を考える際には、適切な州で起業することが極めて重要なのです。
適切なリサーチと計画により、「Global Tech Ventures, LLC」のような会社は、アメリカ国内で成功するための法的枠組み内で運営を行うことが可能にはなります。
そこで外国人起業家の立場であれば、設立前に州の法律や規制を綿密に調査し、必要に応じて法律の専門家のアドバイスを求めることが賢明といえるのです。