昨年以来、米ドルで資産運用を志す方々からのコンサルティング依頼が急増しています。
弊社ではアメリカ不動産コンサルティングに加え、州規制当局に登録されるRegistered Investment Advisor (RIA)としてアメリカ国内での資産運用全般のコンサルティングも提供しており、内容は不動産投資以外となりますが、初心者の方々からのご質問を総括する意図で株や債券に関するまとめ記事を1月7日から期間限定であげさせて頂きます。
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こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
当ブログでは毎日更新でアメリカ不動産に関する項を上げ続けていますが、時折米国内に在住する方々から
「不動産エージェント試験を受ける為に勉強中です」
「分からないことを調べていると、大抵はこのブログが検索結果に出てきます」
「日本語で解説をありがとうございます」
というお礼のメールを頂戴することがあります。
微力ながらアメリカで不動産エージェントを目指す方々のお役に少しでも立てているとすればありがたい限りです。
そこで今回は久しぶりにこのようなニーズにお応え出来るようにQ&Aで進めてみたいと思いますが、最近も
「1031 Exchange(テンサーティーワンエクスチェンジ)に出てくるBoot(ブーツ)って何ですか?」
という質問を頂戴しました。
1031 Exchange(テンサーティーワンエクスチェンジ)については
1031 Exchange(テンサーティーワン・エクスチェンジ)の効果を数字で考える
でも詳細を上げていますのでここでは割愛しますが、実際には1031 Exchange(テンサーティーワンエクスチェンジ)にはかなり細かいルールがあります。
いつものように免責を兼ねると私(佐藤)はCPA(米国公認会計士)の資格は有していませんので詳細はCPAにお譲りしますが、1031 Exchange(テンサーティーワンエクスチェンジ)は
「Like-kind Exchange(ライクカインドエクスチェンジ)」
と呼ばれ、
「同種の資産と交換することで純粋の売却とはみなされず、売却時に発生するキャピタルゲインを繰り延べできる(次の物件に持ち越すことが出来る)」
というのが基本ルールです。
この1031 Exchange(テンサーティーワンエクスチェンジ)はアメリカ不動産の場合は投資物件にのみ適用されるルールであり、自宅として使用する物件には適用されない税法です。
投資物件であればこの1031 Exchange(テンサーティーワンエクスチェンジ)を使って
物々交換(物件と物件の交換)
を行うことで、本来は売却時に発生する税金をそのまま持ち越して繰り延べることが出来ることになります。
ここだけを切り取って聞くと
「投資物件ばかりずるい!」
「なぜ投資家ばかり節税(税の繰り延べ)が許されるのか」
「現代には合っていない税制ではないのか」
と思いたくなるところですが、なぜ投資物件のみ許されているのかといえばアメリカ政府は
「投資家を優遇したい」
からです。
なぜアメリカ政府は投資家を優遇するのかと言えば、そこには
「物件の流動性を保ち、住環境をより充実させたい」
という意図があります。
例えば不動産投資家の中にはそれなりの割合で
「複数の物件を所有する投資家」
がいます。
これが個人ではなく法人となると1000戸単位を所有する不動産会社はざらに存在するものです。
するとそれら複数の物件を所有する法人(個人)の場合は特に
「売却すると税金が発生するからな。。」
と税金の支払いが足かせとなって本来市場に出てくるべき物件が二の足を踏むことも起こり得ます。
そうするとアメリカ不動産業界を国の経済発展の原動力の一つとみなす米国政府としては
「投資物件の流動性を保っておきたい」
「より多くの物件に投資してほしい」
という目的がありますから、
「別の物件に交換するのならば(物件に投資し続けてくれるのなら)売却時の税金の繰り延べを許可しましょう」
というルールを設けることで流動性を保ち、市場を活発にすると同時に住環境の充実を図っているのです。
完璧な交換は存在しない
そこでアメリカ不動産の中でも投資物件の場合は
1031 Exchange(テンサーティーワンエクスチェンジ)
を使用することで物件から物件へと飛び移り、税制の範囲内で無事に物件を交換できた暁には出費(税金)を繰り延べることが出来ます。
もちろん節税ではなく繰り延べですから、最終的にはどこかの時点で売却する際に一番最初の物件から繰り延べられ続けてきた累積のキャピタルゲインに対して課税されることになります。
ここは最近も
自宅所有からの控除項目:キャピタルゲイン(Capital Gains)
でお伝えした
Basis(ベイシス)
の概念で簿価が上下し、最終的に売却する際の
売却価格 - Basis(ベイシス)
に対してキャピタルゲイン課税が発生するわけです。
けれども本来発生する税金の繰り延べを狙って
1031 Exchange(テンサーティーワンエクスチェンジ)
を使うにせよ、現実には
「全く同じ価値と条件で交換できる」
ということはまずあり得ません。
そこには必ず交換する物件と交換される物件に「差」が発生し、その差額調整はほぼ確実に発生してくるのです。
そして
「交換する物件と交換される物件の価値と条件のプラス格差(交換の結果自分の懐に入ってくる利益)」
の飛び出た部分が
Boot(ブーツ)
と呼ばれており、Boot(ブーツ)には大きく分けて
Cash Boot(キャッシュ・ブーツ)
Mortgage Boot(モーゲージ・ブーツ)
の2種類があります。
要するにIRS(Internal Revenue Service:アメリカ合衆国内国歳入庁)としては
「流動性を確保する為に税金の繰り延べは許可する」
「けれども交換時に頭の出る利益についてはきちんと清算して納税するべし」
という考え方なのです。
ちなみにBoot(ブーツ)という言葉は名付け親不明の造語であり、IRSが定める税制にはBoot(ブーツ)という言葉は出てきません。
いつの間にか不動産投資家の間で当たり前のようにBoot(ブーツ)と呼ばれるようになりましたが、1031 Exchange(テンサーティーワンエクスチェンジ)を実行して利益が出る場合は避けて通れないのが Boot(ブーツ)です。
そこで将来に1031 Exchange(テンサーティーワンエクスチェンジ)を使う可能性のある方々の予備知識も兼ねて
Cash Boot(キャッシュ・ブーツ)
Mortgage Boot(モーゲージ・ブーツ)
の2つでそれぞれ例を挙げてみていきましょう。
明日に続けます。
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