こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
Financial Documents(フィナンシャル ドキュメント)の一つであるモーゲージ(Mortgage)について、昨日は債務不履行が発生した場合の手続きについてお伝えしました。
対象物件価値が担保となるこのFinancial Documents(フィナンシャル ドキュメント)のことを
Security Device(セキュリティデバイス)
とも言いますが、モーゲージ(Mortgage)の場合はSecurity Device(セキュリティデバイス)に紐づけられる登場人物は
モーゲージャー (Mortgagor) … 借り手
モーゲージィ (Mortgagee) … 貸し手
の二者のみであるため、いざ債務不履行が発生した場合には仲介となる裁判所手続きが必要となります。
けれども裁判所手続きを間に挟む場合、昨日触れたように滞納の通知から実際の退去に至るまでは実に二年近くかかることもあり、この期間にも債務者は物件に暮らし続けることが出来るのです。
一番の目的は債務者自身が
- 滞納総額
- 遅延料金
- その他費用
を合わせ、耳を揃えてきっちりと支払えるのであれば「物件を取り戻せる」という、セカンドチャンスが与えられるためです。
それにしても最大で二年近くも退去までかかるとは、債権者にしてみればかなり長期に対応しなければならないことになります。
これが為にカリフォルニア州の場合、ほぼ全てのケースにおいて融資形態としては
信託者 (Trustor)
受益者 (Beneficiary)
信託業者 (Trustee)
の三者が登場するトラストディード(Trust deed)が選ばれるのです。
そこで今日は、トラストディード(Trust deed)をSecurity Device(セキュリティデバイス)とした場合の債務不履行時の手続きについてポイントを見ていきましょう。
トラストディード(Trust deed)でDefault(デフォルト)が発生した場合
トラストディード(Trust deed)はアメリカの不動産取引における特定の保証契約の形態であり、購入者(借り手)と貸し手との間で結ばれるものです。
けれども第三者の信託受託者(trustee)が不動産のタイトルを一時的に保持することから、返済期間中の不動産権は完全には買い手に渡っていない状態です。
そして購入者が定められたローンの支払いを適切に行わない場合、すなわち債務不履行の場合には、特定の手順に従ってその不動産は差し押さえの対象となり、後に公売にかけられることになります。
債務不履行が生じた際の具体的な手続きのステップを見ていきます。
1.不履行通知の記録
最初に信託受託者は「Notice of Default(不履行通知)」を公的な記録として残します。
この通知は購入者に対して定められた支払いを完了していないこと、およびその結果としての可能な差し押さえの開始を示すものです。
この手続きは債務不履行の正式な記録となるもので、これにより購入者は問題の解決のために一定期間を与えられることになります。
2.公告までの待機期間
「Notice of Default(不履行通知)」の記録後、信託受託者は少なくとも3ヶ月間待機する必要があります。
この3カ月間に、信託者 (Trustor)である購入者は未払いの債務を清算するチャンスが与えられるわけです。
この3ヶ月の待機期間は購入者に猶予を与え、モーゲージ(Mortgage)の場合と同様に
滞納総額
遅延料金
その他費用
の総額を支払うことで、元の状態に戻すことが出来ます。
3.信託者 (Trustor)による公売公告
上記の3ヶ月の待機期間が経過した後、信託受託者は公売(trustee sale)を宣伝するための公告を開始します。
この公告は最低でも「週に1回、3週間にわたって」行われる必要があります。
これにより
- 公売の詳細
- 日付
- 場所
などの情報が一般公開され、関心を持つ買い手に対して情報が提供されることになります。
4.ローンの再活性化(Reinstate the loan)
そして上記の義務付けられた広告期間が終わると、ようやく公売が可能となります。
けれども実は信託者 (Trustor)にとってはこれで終わりではなく、ローンの再活性化(Reinstate the loan)というルールをもって信託者 (Trustor)者は公売の日の5日前までに
- 未払いの債務
- その他の関連費用
を支払うことで、ローンの状態を元の正常な状態に戻すことができるのです。
もしも信託者 (Trustor)がローンの再活性化(Reinstate the loan)を行使しない場合、公売によって新たな購入者が決まることになります。
Right of redemption(償還権)はない
そしてここが
モーゲージ(Mortgage)
トラストディード(Trust deed)
の大きな違いになりますが、公売後新しい買い手が決まった後に一年間のRight of redemption(償還権)があるモーゲージ(Mortgage)とは違い、トラストディード(Trust deed)には Right of redemption(償還権) がありません。
トラストディード(Trust deed)の場合はモーゲージャー (Mortgagor)のように公売後も一年間暮らし続ける権利はなく、公売後は直ちに立ち退く必要が出てくるのです。
結果としてトラストディード(Trust deed)はForeclosure(フォークロージャー)の手続き期間を大幅に短くすることになり、これが為にSecurity Device(セキュリティデバイス)としてはトラストディード(Trust deed)が好まれています。
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