こんにちは。アメリカで不動産エージェント兼コンサルタントとして働く佐藤です。
アメリカ不動産市場の2024年の見立てについてお伝えしています。
本年2023年を通して、アメリカでは
「物件はいよいよ購入しづらくなった」
という大衆心理が一層強まる結果になったと思います。
もちろん先日お伝えしたように一部の市場では物件価格はまだまだ安く、新築ピカピカが10万ドル台で購入できる場合もあります。
けれども全体的には結構な割高感があり、おいそれと購入出来るものではなくなったのです。
知人も賃貸物件から自宅所有にするべく資金は用意していますが、それでも今度は
「好みの物件がなかなか市場に出てこない」
という状況です。
低金利を手放したくない売りし渋りもあって、市場の在庫は枯渇気味であったために、選べる物件も少なかった一年でした。
そしてこの在庫についてですが、実は2024年は更に深刻になることが予想されています。
今日は、在庫の観点から2024年のアメリカ不動産市場を占ってみましょう。
住宅不足の悪化とその影響
2024年、住宅市場は更なる不足に直面することが予想されます。
購入可能な住宅の数が限られることから、家を探している人々にとって大きな懸念が続きそうです。
昨日お伝えしたように物件価格そのものは多少下がるかもしれませんが、購入者が望む物件を見つけることはより難しくなるのではないでしょうか。
結果としてこの欲しい物件を見つけられない状況は、悪循環が悪循環を生み出す負の連鎖になり得るものです。
家を所有する人々が購入したい物件を見つけられないとなれば、現在の住まいに留まる傾向が強まります。
結果としてその他の購入者にとって引っ越せる住宅はさらに少なくなるというわけです。
数字で見ると、2024年には既存の住宅販売数が今年と比べて14%減少すると予想されています。
ここでいう「既存の住宅」とは中古物件のことで、新築を除いた数字ですが、それでも14%の現象とはかなりの下げです。
すなわち昨日の「物件価格は多少下げる」ということと合わせて考えると、
⇒ 物件価格は下がる
⇒ けれども販売数は下がる
ということは、「購入出来る物件が少ない」という市場予想なのです。
高い住宅ローン金利の問題
加えて高い住宅ローン金利が多くの住宅所有者にとって問題となっており、来年は多少なりとも金利が下げに向かうとはいえ、大衆が一斉に物件を購入する流れにはなりません。
実に住宅ローンを抱える所有者の約3分の2は4%以下の金利を握りしめており、90%以上が6%以下の金利を保有しています。
ということは、来年の金利が6%台に下がったとしてもこれらの人々にとっては
新しい家をより高い金利で購入すること ⇒ 毎月のコストを大幅に増加させる
ことになりますから、売却するインセンティブがほとんど働かないのです。
家を売り出し、新しい家を購入する人々は一般的に家族状況の変化(新しい赤ちゃんの誕生や離婚など)、新しい仕事や退職のための移住などの必要性に迫られるわけで、これ以外の
「どうしても売らざるを得ない」
という世帯以外は、物件を今の時期に売却する理由にはならないわけです。
建設業者による対応と展望
そんな中でせめてもの良いニュースとしては、デベロッパーが新築開発を継続することが期待されています。
Realtor.comが予測する住宅在庫の減少にはこれらの数字は含まれおらず、建設業者は昨年に比べて約0.4%の増加を見込んでおり、約100万戸の新しい家を建設することが予想されています。
また取引を成立させるべく、住宅ローン金利の買い下げなどのインセンティブを与えることが見込まれています。
結果として、2024年は中古物件よりもむしろ、新築物件に注目が集まりやすい年になるかもしれません。
日本市場への影響と考察
ちなみに日本の住宅市場においても、このような米国の動向は国際的な動向は無視できないかもしれません。
日本では都市部を中心に高い住宅価格と限られた土地の問題があり、同様に新築住宅の需要が高まる可能性があるのではないでしょうか。
さらに日本の住宅ローン金利も国際的な金融市場の動向に左右されるため、金利の変動は国内の住宅市場に直接的な影響を与え得る可能性があると考えられます。
言い換えると、日本の建設業者にとってはこのような世界から注目される状況は新しいビジネスチャンスを生み出せる好機かもしれません。
特にエコフレンドリーやスマートホームなどの新しい住宅技術に投資することで、市場の需要に応えることができるのではないでしょうか。
。。。
かくして、2024年のアメリカ不動産市場では
- 既存住宅の不足
- 高い住宅ローン金利
- 建設業者の対応
という三つの重要な因数でベクトルが定まりそうです。
これらの要因は日本を含む世界中の住宅市場に影響を及ぼす可能性があり、個々の家庭や企業にとって無関係ではいられないはずです。
その意味ではそれぞれが市場の動向をより注意深く観察し、賢明な判断を下すことが2024年の成功の鍵となりそうです。
明日に続けます。